作品情報
広い海にぽつりと浮かぶ、猪狩(ししかり)島。世間から見捨てられ過疎化が進む中で、この島が突然、注目される。島の復興を願う泉圭太(藤原竜也)が生産に成功した色鮮やかな“黒イチジク”がSNSで大人気となり、国からの交付金5億円が内定したのだ。 復興のきざしが見え始めたある日、圭太、彼の幼なじみの田辺純(松山ケンイチ)、島の新米警察官の守屋真一郎(神木隆之介)は、島に突如現れた不気味な男を誤って殺してしまう… 『人を殺したんだぞ…島も家族も俺達も…終わりだよ…』『…無かったことにしませんか…?』島の復興と家族の生活を守るため、3人は死体を隠すことを決意する。 ところがその男は、出所したばかりの元受刑者のサイコキラーで、彼の足取りを追う刑事が島を訪れる──。
『ノイズ』レビュー
「金田一」シリーズやサスペンスで、よく村や島が舞台となって、その中の住民が協力して事実を隠蔽するプロットは、比較的よく観るような感じもするし、現在公開中の『99.9-刑事専門弁護士-THE MOVIE』もそんな内容となっているが、その逆パターンとして、島や村の人々の立場から描いたのが今作『ノイズ』だ。
私たちは、どうしても外側の立場から描かれている作品を多く目にしていることもあって、異様に団結力の強い人々を観ると、カルト的な繋がりを感じてしまう。『悪魔のいけにえ』『サイレン 〜FORBIDDEN SIREN〜』『変態村』など良い印象がない。しかし、その一方で固定概念を利用したホラー『クライモリ』も去年公開された。
捜査する刑事が、極端に柄が悪いことによって、意図的に視点を島の住人側に向けさせて感情移入させることで、倫理観をブレさせている。
都会や町から、切り離されてしまったような村や島では、連帯感が生まれる。しかし、それが必ずしも良いものとは言えない。その一方で、何等かの理由で、そこから外れた者は、居場所を無くしてしまう。そこから出て行って、生活する術もない住人たちは、閉鎖された環境の中で必死に耐えることしかできず、闇の部分が増幅されてしまうこともある。
特殊な環境で、法律よりも屈折した仲間意識が行き過ぎて、犯罪行為に及ぶこともある。今作は、その相手が凶悪な殺人犯という点も重なり、どこの視点から観ていいのかが麻痺させられるのだ。
発想はおもしろいし、簡単には図ることができない、善悪の領域や観客の倫理観に訴えかける構図は良くできている。
ところが、エンターテイメント性を狙いすぎたが故というべきか、かなり惜しいというか…..残念でならないのは、予告編のままのシンプルな内容でよかったところを、コーエン兄弟映画のような、ドタバタ喜劇に変換されてしまう点である。たたみかけるかのように、事件が次から次へと巻き起こる。まさに負の連鎖といったところだが、それが無理やりすぎて、おかしな雰囲気にしてしまっている。
死体の場所を警察に教えた人物というのが、映画を観ていれば普通にわかってしまうし、回想シーンで散々、キャラクター同士の中にある、わだかまりを描き続けているだけに、クライマックスの展開も案の定といったところで驚きに欠けてしまう。
点数 75
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