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この映画語らせて!ズバッと評論!!『ギャング・オブ・アメリカ』人間ドラマとしては味わい深いが、ギャング映画としては薄味!!

作品情報

1981年、マイアミ。作家のデヴィッド・ストーンは、伝説的マフィアであるマイヤー・ランスキーの伝記を書くことになる。出された条件は、『俺が生きているうちは、誰にも読ませるな』。そして、ロング・インタビューがはじまり、ランスキーは自らの人生を赤裸々に語りはじめる。それは、半世紀以上におよぶ、ギャングたちの壮絶な抗争の記録だった。

1912年、幼いランスキーはニューヨークにやって来た。貧しい移民の子がのし上がるには、危ない橋を渡るしかない。ラッキー・ルチアーノの兄弟分になったランスキーは、禁酒法下であらゆる犯罪に手を染めてゆく。殺し屋集団《マーダー・インク》を組織し、邪魔者は容赦なく闇に葬る。冷徹なやり方で、ランスキーは犯罪シンジケートの顔役として、アル・カポネやフランク・コステロと肩を並べる存在まで上り詰めた。戦後、キューバに進出したランスキーは、カジノ経営で巨万の富を築く。FBIの追及で《マーダー・インク》の殺し屋たちは次々と逮捕されるが、ランスキーの悪事が暴かれることはなかった。  インタビューが終わりに近づいた頃、ストーンは異変に気付く。ランスキーの捜査を続けていたFBIが、ストーンのインタビュー原稿に目を付けていたのだ。FBIが追っているのは、莫大なランスキーの資産だった。3億ドルともいわれる金は、どこに隠されているのか?そして捜査協力を強いられたストーンは、ある“決断”を下すことになる……

『ギャング・オブ・アメリカ』レビュー

記者や捜査官による、特定の人物へのインタビューを入口として、過去描いていくという、映画やドラマではよくある手法であり、作家デヴィッド(サム・ワーシントン)の物語も描かれていく。

ギャングの知られざるエキサイティングな話を聞き、その物語に魅了されていく。ランスキーの口から発せられる哲学的な言葉の数々によって、デヴィッドの精神状態にも変化が表れてくる。 これは、ハーヴェイ・カイテルの渋さがあったからこその説得力だといえるだろう。

デヴィッドの崩壊寸前な夫婦関係、子供との絆など。つまり一般的な家族の問題と、伝説的マフィアであり大富豪のランスキーの抱えていた問題も共通しているのだ。

これは人間とは、どんな立場や環境に置かれていても、常に同じような問題を抱えている愚かな生き物だということなのだろう。

ランスキーも胸の内をさらけ出し、それを聞き入れ執筆するデヴィッドの間には、奇妙な関係性が築かれていく。それは単に知りたいという欲求によるものもあるが、友情に近いものの様にも感じられる

時代によってギャングやマフィアが、どのように扱われて、どのようにアメリカ社会の中で機能していたのかを、淡々と描き出す。それは戦前と戦後では大きく変化し、さらに80年代ともなると事情は変わってくる。

これは時代、時代のヤクザの立ち位置を描いた『ヤクザと家族 The Family』や『すばらしき世界』と共通する部分もあるが、今作の決定的な問題点はバランスの悪さだ。

メインはランスキーの物語で、邪魔にならない程度にデヴィッドの物語が描かれるのであれば良いのだが、デヴィッドの物語が出しゃばっていて、全体尺の半分を占めている。

全体的には、家族関係を描いた人間ドラマとしての魅力はあるものの、伝説のマイヤー・ランスキーが活躍するギャング映画としては、薄味なものになってしまっているのだ。

点数 76

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