作品情報
居るべき場所を見失った 17歳の少女がたとりついたのは、懐かしくてすこしふしぎな伝説の家《マヨイガ》
居場所を失った17歳の少女・ユイ彼女がたとりついたのは、どこか懐かしさと共にあたたかみを感じさせる、海の見える古民家「マヨイガ」だった。それは、岩手県に伝わる“訪れた人をもてなす家”というふしぎな伝説、血のつながりがない新しい家族たちとの、ふしぎだけとあたたかい共同生活が「岬のマヨイガ」
で紡がれていく。
主人公・ユイを演じるのは自らも17歳になる国民的女優・芦田愛菜。心が優しく包み込まれる、ノスタルジック・ファンタジーがいま始まる
先取り版とは?
私、映画評論家バフィーがマスコミ試写で、いち早く観て評論する先取り版です。通常回では、公開日もしくは前後に更新していますが、毎週10本以上の新作を観ていて、量が多く大渋滞状態ということもあって、先取りもしていきます。
ダメな作品はダメと言いますが、基本的にネタバレを垂れ流して、映画自体を観なくてもいいような評論はしません。
『岬のマヨイガ』レビュー
戦争や災害によって、家族を失ったり、問題を抱えている者同士が肩を寄せ合い、擬似貴族のように生活を共にするようになっていく映画やドラマというのは、数多くある中で、近年は特にそういった「人と人との繋がり」を見つめ直すような作品が増えてきている。
ハンガリーの映画『この世界に残されて』でも、ホロコーストから生き延びた者たちが心の隙間を埋め合おうとする様子が描かれていたし、『護られなかった者たちへ』や『そして、バトンを渡された』など、今後公開される作品の中でも描かれていた。
血の繋がりだけではなく、他人同士でも支え合うことはできて、それがいつしか「家族」になり得るという大きなサイクルを描くことは、逆に人と人との繋がりを断ち切りながらも、経済的や精神的には繋がりが必要という両極端の中にあるこのコロナ禍に生きる人々の目には、どう映るのだろうか。
今回は東日本大震災と東北や関東に伝わる「迷い家」がベースになっていることもあり、岩手県が舞台となっているものの、日本の神話や妖怪、宗教的な象徴というものは共通して、ルーツを紐解いていくと、何か大きな問題に立ち向かうための心のより所だったり、教訓によるものが作りだしたものだったりする。
それらが「マヨイガ」を通して入り混じる独特の世界観は、「日本」という国が築いてきた伝統と歴史のメタファーのようにも感じられるのと同時に、人々の悲しみや絶望感が大きな巨悪となって立ちふさがるといった点でも、岩手の限定的なフィールドではなくて、「日本」そのものが舞台であるようにも感じた。
今回、脚本を務めたのは、多くのテレビや映画のアニメを手掛けた吉田玲子ではあるが、宗教色の強いものから、一般向けの作品まで幅広く手掛けていることもあって、今回も少し間違うと宗教色が強かったり、説教臭くなるところが、絶妙なバランスのファンタジーに仕上っている。
線の数が少ないシンプルなキャラクターの作画に関しては、好き嫌いが分かれるかもしれないが、やわらかいタッチの分、背景や自然、特に「緑」の使い方がよく映えているようでもある。
CREDIT
原作:柏葉幸子「岬のマヨイガ](講談社刊)
監督:川面真也
脚本:吉田玲子
キャラクター原案:賀茂川
ふしぎっとキャラクター原案:丹治匠
キャラクターデザイン・総作画監督:清水 洋
美術監督:畠山佑貴
色彩設計:水野愛子
CGディレクター:高野慎也
撮影監督:渡辺有正
編集:長谷川舞
音楽:宮内優里
主題歌:羊文学「マヨイガ」F.C.L.S. (Sony Music Labels Inc.)
音響監督:木村絵理子
録音調整:内田誠
音響制作:東北新社
統括プロデューサー:高瀬透子
プロデューサー:松尾拓、竹枝義典、岩崎紀子
制作:david production
製作:「仰のマヨイガ」製作委員会
配給:アニプレックス
助成:●大化庁文化庁文化芸術振興費補助金(映画館活動支援事業)
独立行政法人日本芸術文化振興会
8月27日(金)より全国公開
点数 79
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