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この映画語らせて!ズバッと評論!!『真夜中乙女戦争』繰り返される日常というサイクルの中で生きることに意味はあるのか?!

この映画語らせて!ズバッと評論!!『真夜中乙女戦争』繰り返される日常というサイクルの中で生きることに意味はあるのか?!

作品情報

4月。上京し東京で一人暮らしを始めた大学生の“私”。友達はいない。恋人もいない。大学の講義は恐ろしく退屈で、やりたいこともなりたいものもなく鬱屈とした日々の中、深夜のバイトの帰り道にいつも東京タワーを眺めていた。そんな無気力なある日、「かくれんぼ同好会」で出会った不思議な魅力を放つ凛々しく聡明な“先輩”と、突如として現れた謎の男“黒服”の存在によって、“私”の日常は一変。人の心を一瞬にして掌握し、カリスマ的魅力を持つ“黒服”に導かれささやかな悪戯を仕掛ける“私”。さらに“先輩”とも距離が近づき、思いがけず静かに煌めきだす“私”の日常。しかし、次第に“黒服”と孤独な同志たちの言動は激しさを増していき、“私”と“先輩”を巻き込んだ壮大な“東京破壊計画=真夜中乙女戦争”が秘密裏に始動する。一方、一連の事件の首謀者を追う“先輩”は、“私”にも疑いの目を向けていた。“私”と“先輩”、“私”と“黒服”、分かり合えたはずだった二人の道は少しずつ乖離していき、3人の運命は思いもよらぬ方向へと走りだす…

『真夜中乙女戦争』レビュー

学校に行って、就職して、結婚して、子どもができて、家を買って……という人間が繰り返す、世界のサイクルに飲み込まれて、消費されて、最後には死んで灰になる。世界の家畜のような存在が人間だ。

そんなサイクル自体に疑問を感じる時というのが、人生には何度かある。中には、そのサイクルを当たり前すぎて、流れに身を任せ、疑問にすら感じない者もいるが、一番敏感に感じるのが、10代後半から20代前半といったところだろうか。

もちろん、その後も何度か、人生の岐路に立ったときに思う者もいれば、そういった思考にならない者もいる。以前は思っていたが、その時には考えなくなってしまう者もいる。自分の人生、世界の意味、そんな答えの出ないことを考えるぐらいなら、サイクルに飲み込まれてしまう方が、いっそ楽だ。

しかし、そのサイクルを壊してしまったらに、人類はどうなってしまうのか。当たり前だと思っていた日常が消えてしまえば、全てが平等な世界が実現できるかもしれない。そんな思想は、テロリストやカルト的なものに感じるかもしれない。実行してしまえば、それは悪とみなされ、世界によって批判と裁きを受けるだろうが、そういったことを思うこと自体、その感覚はごく自然である。

今作は、決して他人事ではなく、誰もが自分自身のサイクルの中での生き方を見つめ直すものとなっている。主人公に名前がないのは、あなた自身でもあるからなのだ。

全編を通して、何かを朗読しているようなセリフも、頭の中で考えていることが表されている。言ってしまえば、全てが脳内で展開されている物語なのだ。

ラストでスクリーンに映し出される光景を見て、何を思うかが、その人の生きる意味にリンクするものとなっている。

そこで恋人だったり、家族がどうなってしまうのだろうか、もしくは大好きな仕事はどうなってしまうのだろうか……と、思うかは、人によって、それぞれ全く異なるだろうが、何かを思うのであれば、それこそが生きる”希望”だということだ。

そして、それがこの世界に生きることの意味なのだ。

点数 88

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