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この映画語らせて!ズバッと評論!!『幸せの答え合わせ』70歳を超えた監督が今だからこそわかる両親の想いを映画化!!

この映画語らせて!ズバッと評論!!『幸せの答え合わせ』70歳を超えた監督が今だからこそわかる両親の想いを映画化!!

作品情報

今や世界三大映画祭と並んで注目されるトロント国際映画祭の第44回に正式出品され、物語の主人公である夫婦と息子の家族3人に扮する名立たる俳優たちの贅沢な共演が、世界各国のメディアに絶賛された話題作。29年間、連れ添ってきた夫から突然、別れを切り出される妻のグレース役には、アネット・ベニング。ゴールデングローブ賞にノミネートされること8度、そのうちの『華麗なる恋の舞台で』と『キッズ・オールライト』で2度受賞し、アカデミー賞には4度ノミネートされた、ハリウッドのトップに立つ大女優だ。アート系の個性的な役柄から、エンターテイメントの華麗なるキャラクターまで自在に演じ分け、近年では『キャプテン・マーベル』など超大作でも存在感を放っている。毎日、妻に優しくお茶を淹れ、責められても反論しなかったのに、何の前触れもなく「出て行く」と宣言する夫のエドワードには、『ラブ・アクチュアリー』で英国アカデミー賞、LA映画批評家協会賞、『ナターシャの歌に』でゴールデングローブ賞を受賞したビル・ナイ。英国を代表する演技派俳優で、日本でも大ヒットした『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』などで、映画ファンから高い人気と厚い信頼を寄せられている。グレースとエドワードの一人息子のジェイミーには、英国インディペンデント映画賞を受賞した『ゴッズ・オウン・カントリー』で注目され、大ヒットテレビシリーズ「ザ・クラウン」でチャールズ皇太子役を演じ、ゴールデングローブ賞を獲得したジョシュ・オコナー。歴史あるハイブランド、ロエベやブルガリのアンバサダーをつとめるなど、人気急上昇中の英国若手スターだ。眼差し、息遣い、その一つ一つで心に響くアンサンブルを奏でる3人の稀有なる才能が、ほろ苦くもあたたかいリスタートの物語を完成させた。

『幸せの答え合わせ』レビュー

詩集を作っていて、高圧的なキャラクター構造の母グレースが、同じくアネット・ベニシングが『ハサミを持って突っ走る!』で演じた母親役に少し似ているのは気のせいだろうか。アネット・ベニシングの演じるキャラクターは、コメディ要素があるはずなのに、どこか緊張感が漂っているのが特徴であって、今回も健在ということに違いない。

熟年離婚をテーマとした作品ではあるが、時代は現代にされているものの、監督・脚本を務めたウィリアム・ニコルソン自身の「成人してから両親の離婚」経験を投影したものであるため、メインの視点は息子のジェイミーとなっている。

突然、愛人がいることを告白し、家を出ていこうとする父だが、その発端は母の高圧的、時には暴力的な性格によるものだったことも理解できる。

一方、母は不器用がゆえに、愛情表現があまり上手いとは言えない。しかし、父が去ろうとしたことで、今までの気持ちをぶつけるが、時すでに遅し。

お互い愛していないわけではないのだろうが、もう戻れないことは何となく理解しはじめている中で、母は必死にもがくも全てが空回りしている。

ジェイミーとしては、大好きな両親の離婚は避けたいというのが本音ではあるが、もう両親の気持ちが元に戻らないことも受け入れなくてはならないことを悟っていく。

中立の立場だからこそ、どちらにも加担できないが、このまま行くと確実に離婚するという複雑な心境がスクリーンを通して伝わってくるのは、演出と俳優の演技によるものが大きい。

皮肉のように美しいイギリス・シーフォードの風景が心に突き刺さるのと同時に、「それでも生きていくしかない」といった前向きな提示にもなっている。

もし、同じ題材をウィリアム・ニコルソンが若い頃に製作していたとしたら、視点が限定的になり過ぎていたかもしれない。70歳を超えて、様々な人生経験を積んできたからこその視点というのが、説得力を増している要因であろう。

CREDIT

出演

グレース:アネット・ベニング                     Grace : Annette Bening

エドワード:ビル・ナイ                                Edward : Bill Nighy

ジェイミー:ジョシュ・オコナー                  Jamie : Josh O’Connor

アンジェラ:サリー・ロジャース                  Angela : Sally Rogers

ジェス:アイーシャ・ハート                         Jess : Aiysha Hart

デヴ:ライアン・マッケン                            Dev : Ryan McKen

監督・脚本:ウィリアム・ニコルソン           Director/Writer : William Nicholson

撮影監督:アンナ・ヴェルデズ=ハンクス    Cinematography : Anna Valdez-Hanks

美術:サイモン・ロジャーズ                         Production Design : Simon Rogers

衣装:スザンヌ・ケイヴ                                Costume Design : Suzanne Cave

メイク:メラニー・レニハン                         Makeup : Melanie Lenihan

音楽:アレックス・ヘッフェス                     Music : Alex Heffes

2018年|イギリス|英語|カラー|スコープサイズ|DCP|5.1ch|100分|原題:Hope Gap|字幕翻訳:川喜多綾子

提供:木下グループ 配給:キノシネマ

© Immersiverse Limited 2018

公式サイト:https:// movie.kinocinema.jp/works/hopegap

6月4日(金) キノシネマみなとみらい・立川・天神ほか全国順次公開

点数 80

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