作品情報
月曜日の台本の読み合わせから金曜日の公開収録までの『アイ・ラブ・ルーシー』を制作する1週間の間に、ルシル・ボール(ニコール・キッドマン)とデジ・アーナズ(ハビエル・バルデム)は公私ともに危機に直面する。それは、番組や2人のキャリアと結婚生活を脅かすことになる。アーロン・ソーキンの脚本・監督による、舞台裏を描いたドラマ。
『愛すべき夫妻の秘密』レビュー
1950年代に社会現象的にヒットし、日本でも放送されていたアメリカのシットコム『アイ・ラブ・ルーシー』で主人公夫婦を演じたルシル・ボールとデジ・アーナズは、実生活においても夫婦関係であった。
ルシルもデジも番組のヒットによって、知名度が上がり、俳優としては成功する一方で、夫婦関係は悪くなる一方だったが、世間の目は、おしどり夫婦の象徴として映っており、ふたりの関係が崩れることは、番組自体の存続などにも関わることもあって、かなり神経質な空気が漂う舞台裏と、プロ意識でドラマの撮影を続ける、複雑な心境を現在と過去の物語が交差しながら、 赤狩りやヘイズ・コードなどの時代特有の業界の概念や移民、女性の立ち位置などのジェンダー問題も交えて描いていく。
成功が破滅を導くという典型的な物語ではあるが、何しろ実際の物語ということで説得力が違っている。
ルシルの伝記映画は、2015年頃から企画されており、一時はケイト・ブランシェットが演じるともいわれていたが、今回ルシルを演じているのは、『めぐりあう時間たち』『スキャンダル』などでも特殊メイクによって顔を変えてきたニコール・キッドマン。ただ、周りのキャラクターが似ているわけでもないため、ルシルだけ、そこまでして似せる必要性もなかったような気がしてならない。
ニコールといえば、トム・クルーズと結婚していて、良好の夫婦関係であるとされていたが、スタンリー・キューブリック監督の遺作『アイズ・ワイド・シャット』で夫婦役として共演した後に離婚した過去がある。
仮面夫婦という点で、ルシルと共通す部分があるニコールをキャスティングした勇気も評価に値するところだ。
ドラマの間に、実際に『アイ・ラブ・ルーシー』の関係者たちのインタビューが盛り込まれていて、ドキュメンタリー的側面もある作品ではあるが、監督を務めるアーロン・ソーキンは『シカゴ7裁判』『スティーブ・ジョブズ』など実話ものを手掛けてきただけに、真実を追求する姿勢が自然と見えてくるといえるだろろう。
点数 80
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