イントロダクション
2015年、ロンドンの宝飾店街〝ハットンガーデン″の貸金庫から1,400万£(約25億円)相当の大量の宝石や現金が盗まれる事件が起きた。当時、この事件がメディアで報道されるやいなや、その真相について英国中で熱狂的な推測合戦が巻き起こった。徐々に事件の詳細が明らかになるにつれ、国民とメディアの目はこの事件に釘付けとなり、固唾を飲んで捜査の進展を見守っていた。やがて、決して誰もが予想できなかった意外な犯人像が浮上する――逮捕されたのはなんと平均年齢60歳以上のオールド窃盗集団だったのだ。
本作は、英国史上もっとも「最高額であり最高齢の金庫破り」と呼ばれた実話の映画化である。 監督は、『マン・オン・ワイヤー』(08)でアカデミー賞®長編ドキュメンタリー映画賞を受賞し、『博士と彼女のセオリー』(14)、『喜望峰の風に乗せて』(17)などで知られるジェームズ・マーシュ。物語の前半は、(動きにキレがなくなった)オールド窃盗集団の犯行の一部始終を実際の事件を忠実に再現しながら、小気味よいテンポとユーモアで映し出す。一転して、計画の成功もつかの間、犯人たちによる内輪もめが展開する物語後半は、仲間同士の不信感と疑いが横行する生々しい人間模様が描かれる。劇映画とドキュメンタリーでキャリアを重ねてきたジェームズ・マーシュのたしかな手腕は、本作の「実話×エンターテインメント」の魅力に圧倒的な説得力をもたらしている。
本作で窃盗団のリーダーであるブライアンを演じたのは、アカデミー賞®で2度のオスカー獲得、その他ゴールデングローブ賞をはじめ各国の映画賞で数多の受賞歴を持つ世界的大俳優のマイケル・ケイン。優雅な佇まいとニヒルを兼ね備えた唯一無二の存在感で、英国中を揺るがせた窃盗事件の主犯格としてほかのメンバーを率いる。窃盗団のナンバー2であるテリーを演じたのは、『パディントン』シリーズ、『ベロニカとの記憶』(17)などのジム・ブロードベント。ブライアンとの対立構造、飄々としたキャラクターが画を盛り上げる。窃盗団のおとぼけ役ケニーを演じたのは『さざなみ』(15)のトム・コートネイ。シニアならではの「あるある」を連発して、大いに笑わせてくれる重要なキャラクターの一人。その他、『博士と彼女のセオリー』(14)のチャーリー・コックス、『チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密』(15)のポール・ホワイトハウス、『キャッツ』(19)のレイ・ウィンストン、『キングスマン: ゴールデン・サークル』(17)のマイケル・ガンボンなど、英国を代表する名優たちが集結し、キャリア最高の存在感を発揮している。 また、劇中にはキャストたちの若かりし頃の出演作カットが挿し込まれ、彼らの長く偉大なキャリアの足跡を垣間見ることが出来る。映画ファンをうならせる粋な演出だ。
英国が誇る最上級のスタッフとキャストが集結し、英国史上空前の窃盗事件を最高のエンターテインメントに仕上げた本作。人生も悪さも大ベテランの窃盗集団が巻き起こす、その驚きの顛末を目撃せよ! (公式HPより)
ストーリー
かつて「泥棒の王(キング・オブ・シーヴズ)」と呼ばれたブライアン(マイケル・ケイン)。一度は裏社会から引退し、愛する妻と平穏な日々を過ごしていた。しかし、妻が急逝したことをきっかけに、かつての犯罪にまみれた自分が呼び起こされることになる。知人のバジル(チャーリー・コックス)からロンドン随一の宝飾店街〝ハットンガーデン″での大掛かりな窃盗計画を持ちかけられたブライアンは、テリー(ジム・ブロードベント)、ケニー(トム・コートネイ)、ダニー(レイ・ウィンストン)、カール(ポール・ホワイトハウス)ら、かつての悪友たちを集め、平均年齢60歳オーバーの窃盗団を結成。綿密な計画のもといざ実行日を迎えようとしたとき、ブライアンは突然計画から抜けると言い出す……。
スタッフ・キャスト
監督 : ジェームズ・マーシュ『博士と彼女のセオリー』『喜望峰の風に乗せて』
脚本 : ジョー・ペンホール『ザ・ロード』『マインドハンター』
出演 : マイケル・ケイン『TENET テネット』『キングスマン』
ジム・ブロードベント『ムーランルージュ』『ドクター・ドリトル』
トム・コートネイ『イントゥ・ザ・スカイ 気球で未来を変えたふたり』『ライラの冒険 黄金の羅針盤』
チャーリー・コックス『デアデビル』『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』
ポール・ホワイトハウス『スターリンの葬送狂騒曲』『チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密』
レイ・ウィンストン『ナルニア国物語/第1章: ライオンと魔女』『キャッツ』
マイケル・ガンボン『ジュディ 虹の彼方に』『キングスマン: ゴールデン・サークル』
フランチェスカ・アニス『リバティーン』『バンクロフト』
クレジット
撮影: ダニー・コーエン
音楽 : ベンジャミン・ウォルフィッシュ
編集:ジンクス・ゴッドフリー
2018年/イギリス/カラー/108分
短評
かつての名優たちの老いた姿を観るというのは、いくらか悲しいものがあるのだが、今作はそんな悲しさがてんこ盛りの作品だといえるだろう。
イギリスの名優たち老いを連続で観ていると、かなり複雑な心境になってくる。彼らが全盛期の頃は、私はまだ生まれていなかったが、全盛期を観てきた人にとっては、どう感じるのだろうか……
また拍車をかけるように、キャラクターたちの過去として、実際の俳優たちが出演していた映画がアーカイブ映像のように使用されているのだ。
チーム戦というのに、それぞれが勝手な行動を繰り返すというのも、頑固な老人たちの特徴ではあるが、俳優たちの今まで演じてきた役の傾向や特徴をよくとらえていて、実生活を知っているわけではないのに、実生活を観ているような気分になる。
映画のテンポ自体も老人のようで、頑固爺さん同士のいざこざの方が印象に残ってしまって、肝心な強盗シーンや騙し合いによる駆引きのシーンが全く記憶に残らないのは難点。
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