作品情報
監督はエマニュエル・オセイ・クフォー、出演は『フロントランナー』『ユニコーン・ストア』の マムドゥ・アチー 、『スティール・マグノリア』『クリード チャンプを継ぐ男』のフィリシア・ラッシャッド 、『ザ・トゥエンティフォース』のトシン・モロフンポラ、『サイバー・ゴースト・セキュリティ』のチャーメイン・ビンワ、アマンダ・クリスティンなど。
『ブラック・ボックス』レビュー

先日紹介した『冷たい嘘』同様に、ブラムハウス・プロダクションズによるアンソロジー「Welcome to Blumhouse」のプログラムのひとつである。
事故によって、記憶障害のある男が特殊な治療を進めるうちに、記憶を取り戻していくのだが、何かがおかしいことに気づいていくというもので、あまり書くとネタバレになってしまうため、非常にネタバレなしの批評が難しい作品である
記憶喪失の男が、記憶を取り戻す過程で、実は自分が犯罪者であったり、家族に暴力をふるっていたりしていたことも明らかとなっていき、記憶を失っていた自分の方が良い人間であることに気づいていくという、いわゆる「記憶喪失もの」であくありがちな展開と過程を踏んではいくのだが、今作は着地点がそれらの作品とは少し違っている。
2014年のジョニー・デップ主演映画『トランセンデンス』やドラマ『 アップロード ~デジタルなあの世へようこそ~ 』のように、記憶をバックアップしておくことで、意識や記憶を移すことができるという、SFのような世界が現実社会でも研究されているのだが、近年、死後の世界への観方が少し変わってきたように感じられる。
恋人の死、家族の死...大切な人の死を経験し、残された者は、その後も生きていかなければならない。その中で現実的な問題として、経済的、精神的な問題もクリアしていくためには、忘れようとしたり、新たなパートナーを求めたりすることは、当然ともいえ、そこには亡くなった者の居場所はないが、もしも記憶や意識を他人ら移すことで生き続けられるとしたら、死というのが、あくまで肉体的な問題として、今までの概念というのが、世界の秩序というのが変わってしまうかもしれない。
脳死や若くして子供を失った家族にとっては、どんなかたちでも生きていてほしいとは思うかもしれないし、その葛藤というのは、様々な映画でもたびたび描かれてきている。
それは良いことなのか、本当に人間の死なない時代がくるのかもしれないが、それは踏み入れてはいけない領域ではないだろうかということを問いかけるような作品である。
最終的な着地点に繋がる、主人公の葛藤が大雑把に描かれてすぎていて、心情が変化していくコントラストが見えにくいというのは難点であり、ラストの処理の仕方には、雑さを感じてしまう。


点数 75
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