作品情報
『ルーム』『キャプテン・マーベル』のブリー・ラーソンが長編初メガホンを取り、自ら主演を務めたファンタジックなヒューマンドラマ。画家になる夢に挫折したキットは、口うるさい両親を納得させるためOLとして働き始める。そんな彼女のもとに、謎のセールスマンから案内状が届く。不思議な店の中でキットを待ち受けていたセールスマンは、彼女が幼い頃から夢見てきたユニコーンを売ってくれるという。不審に思いながらも、ユニコーンを世話する条件としてセールスマンに提示されたミッションをこなしていくキットだったが……。共演には『アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!』『スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け』のサミュエル・L・ジャクソン、『スクール・オブ・ロック』『俺たちポップスター』のジョーン・キューザック、『パティ・ケイク$』『フロントランナー』のマムドゥ・アチー、『デッドプール』『彼女はパートタイムトラベラー』のカラン・ソーニなど。
発掘!未公開映画研究所とは?
宗教性の問題、出演者の知名度、お笑いの感覚の違い…などなどの理由によって、日本では公開にいたらない作品が多く存在する。アカデミー賞にノミネートされている作品でも未公開作品は多い。
それもそうだろう、逆にアメリカやフランスで日本の映画が何でも公開されていると言えばそんなわけもなく、全体的に見て1割にも満たないだろう。
日本はそんな中でも割と海外の作品を公開している珍しい国であって、そんな中でもやっぱり公開されない映画というのは山のように存在する。
「発掘!未公開映画研究所」はそんな映画を発掘していくというもので、その中でも更に知名度が低いものを扱っていくつもりだが、必ずしも良作ばかりではない、中には内容がひど過ぎて公開できなかったものもあるのでご注意を!!
今回紹介するのは『ユニコーン・ストア』
短評
2016年制作された映画で「第42回トロント国際映画祭」で上映された後に、行き場がなかった作品をNetflixが配信権を取得して、Netflix映画とされているが、もともとは劇場公開を予定されて製作された映画である。
女優のブリー・ラーソンによる初監督作品ということと、自分の経験を反映させた映画として力が入っていたのにも関わらず、劇場公開できなかったのは残念だが、決して劇場で公開できない低いレベルの映画ではない。
ブリーは、もともとシットコムの子役としてデビューして、その後にシンソングライターデビューし、アイドル的な売り出し方をされていたが、女優としては、 端役やドラマの出演が多く、伸び悩んでいた女優なだけに、当時ブリー自身が感じていた、子役から大人になるにつれての「このままで良いのだろうか」という葛藤を反映させたものと推測する。
アメリカの子供にとっては、圧倒的な知名度と人気のある、架空の生物というのが「ユニコーン」だ。有名なところでは、『マイ・リトル・ポニー』というアニメがあったり、子供向けアニメにユニコーンや虹が多く登場する。
これは「サンタクロースをいつまで信じているのか」という問題にも通じるもので、「ユニコーン」の存在が実際のものなのか、空想上の生物なのかということを判断できるようになるが、子供が大人になるステップのひとつともされている。
この映画における「ユニコーン」というのは、子供的感覚、無邪気さのメタファーである。
しかし、アーティストやクリエイティブな職業に求められるのは、オリジナリティや奇抜な発想だったりする。ある意味、子供的感覚が必要な場合もあるのだ。
「ユニコーン企業」ということがある。これは、設立してあまり年数が経っていないの急成長、多くの評価を受けている企業を指しており、かつてはツイッターやフェイスブックもそうだった。
そういった企業の職場には、感覚をリセットするような場所があったりする。つまり遊び場があるのだ。
高校や大学を卒業して社会経験をすることで、社会的概念を押し付けられることが、あたかも大人になったことのように提示されているのだが…果たしてそうなのだろうか。
今企業が求めるのは、クリエイティブな人材、しかし社会的概念が通用し、ときには、求めていたものと120度違う、型にはまった人間にもなれる都合の良い存在ということが今作でも提示される。矛盾だらけだ。
社会は勝手な概念で「ユニコーン」は空想上の生物だというが、それを信じていても良い。これは別にストレートに「ユニコーン」を指しているとも限らず、人それぞれに違う、大人になるために捨てなければならないものは、本当に捨てるべきなのだろうか…という物語なのだ。
横浜流星主演映画で『いなくなれ、群青』という邦画があったが、この作品で描かれていたのは、成長する過程で捨てた自分の価値観や概念が謎の島に集まっているというものだった。
果たして捨てるべきなのか…捨てると判断する人もいるが、捨てないまま生きるという選択をする人もいる。だから、この映画で共感する人もいれば、全く共感できない人が結構別れる作品だと思う。
奇抜な色彩センスとコミカルなキャラクターたちのおかげで、単純に映画として楽しい作品でもあるし、『キャプテン・マーベル』のブリー・ラーソンとサミュエル・L・ジャクソンが全く違う雰囲気の共演をしているという点にも注目してもらいたい。
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