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この映画語らせて!ズバッと評論!!【第36回東京国際映画祭SP】『ひとつの愛』田舎に逃げたところで、田舎には田舎の嫌なところが沢山ある?!

この映画語らせて!ズバッと評論!!【第36回東京国際映画祭SP】『ひとつの愛』田舎に逃げたところで、田舎には田舎の嫌なところが沢山ある?!

作品情報

スペインを代表するイザベル・コイシェの最新作。山間の村の一軒家で暮らす女性と、ドイツから移住してきた隣人の男性との奇妙な関係を描く。サンセバスチャン国際映画祭コンペティション作品。

『ひとつの愛』レビュー

田舎に居住したものの、結局は田舎も問題だらけという田舎の幻想を突き崩すような作品は多く制作されているし、前回の東京国際映画祭において上映された『理想郷(上映時:ザ・ビースト)』もそういった題材を描いていた。

何かの問題を抱えて、田舎で静かに暮らそうと移住してきたひとりの翻訳家(通訳)の女性ナタリア。物件を下見もしないで借りたというだけのことはあり、とにかく都会から逃げたいという意思が強かったのだろう。

しかし物件が思った以上にボロボロだし、近所の人たちもやたらと話かけてくる。孤独でいたくてもそうはいかいない状況が多発。何かと人の手を借りないと解決できない問題に巻き込まれていくなかで、多くの人たちと不本意ながらも知り合いになっていく。

親切な近所の男は、パブロ・ネルーダが好きだと語る自称アーティストだが、ネルーダの作品は近年は女性蔑視が過ぎるとして問題視されていることから気づくように、この男には何か裏があるのだ。

そんな中でドイツから移住してきて、嫌われ者の大男アンドレアスとも知り合うのだが、物件を修理するかわりに肉体関係を求めてくる異常者だった。

資金もそれほどなかったため、その要求をのんでしまったナタリア。はじめは嫌で仕方なかったのだが、アンドレアスが忖度や建前というものを乗り越えて直球に思ったことを伝えてくる欲望のままに行動するアンドレアスとの恋愛とは言い辛い奇妙な関係が築かれていくのだが、気づくと他人との関係を遮断しようと田舎にきたはずが、他人との繋がりを求めている自分になっていることに気付いていく。

ちょっとしたこともすぐに広まる田舎では、ふたりの関係も噂になり、次第に村八分のような状態となっていくことで、人生に逃げ場などなく、常に一方通行。問題には自分で立ち向かうしかないというメッセージ性もあるように感じられる。

最終的な着地点が気になる作品ではあったが、思った以上の意外性などは感じられず、とことんどん底に落とされるようなブラックなわけでもなく、ちょっとふわっとした感じが残念だった。

点数 85

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