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この映画語らせて!ズバッと評論!!【第36回東京国際映画祭SP】『魔術』父親を殺された少女は突如自分のルーツと信仰についての回答を求められる?!

この映画語らせて!ズバッと評論!!【第36回東京国際映画祭SP】『魔術』父親を殺された少女は突如自分のルーツと信仰についての回答を求められる?!

作品情報

1880年のチリ。ドイツ人入植者に父親を殺害された13歳の先住民の少女が、村の祈祷師に助けを求める。祈祷師はドイツ人一家の子どもたちを呪術で犬に変える…。サンダンス映画祭で上映。

『魔術』レビュー

ドイツ人家族のもとで家政婦として働く先住民の少女。ドイツ人と共にキリスト教を信仰し、自分自信もドイツ人のように生きようとしていたのだが、ある日、ドイツ人の羊が大量死する…..。

ドイツ人は先住民の呪いによるものだと言い張り、少女の父親に疑いをかけ、少女の目の前で犬を放ち喰い殺してしまう。

父親を殺した家族のもとで今までどおり働くわけにもいかず、またドイツ人にも拒絶される。キリストの神に救いを求めても、先住民たちの神ではないと言われてしまう。

何を信じて、何に救いを求めて、これからどう生きていけばいいのか路頭に迷い、辿り着いたのは先住民のコミニティ。

自分のルーツと、ドイツ人が言っていたように、実際に魔術によって呪いをかける能力があることを知った少女は、ドイツ人一家に魔術を使った復讐を企てていく。

ここでわかるように、羊を大量に殺した犯人は、やはり先住民だったのだ。つまり先住民とドイツ人の争いに巻き込まれ、実際に父親が知っていたのか、関与していたのかは不明だが、先住民とドイツ人との争いに巻き込まれたということになる。

その争いは、植民地化したドイツ人への根深い怨みがあるため、簡単に解決できることではない。そこに少女が復讐の道を進んでしまうのには、自分自信のルーツに身を任せるという意味では覚醒ともいえ、そのなかで罪のない幼いドイツ人の子どもを犬に変えてしまうというのは、複雑な気持ちにさせられる。

それは暴力が暴力が生み、憎しみが憎しみを生むという、 呪いともいえる人間同士の憎しみの連鎖を少女が体現していくことになり、その犠牲となるのが子どもたちだからだ。

争いによっていつも犠牲になるのは後世に残される子どもたちの精神であるということを描いているのだろう。

呪いや魔術というものが通常稼働している世界ということもあり、全体的にスピリチュアルな世界観の作品ではあるが、行われていることとは比例しないほどに静かな映像が続く作品でもあった。

点数 77

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