作品情報
求職中の夫、保険勧誘員の妻、6歳の聴唖の息子の仲良し3人家族。夫が愛車ロシナンテでバイクタクシーを始めて生活が安定したのも束の間、思わぬトラブルが勃発し…。
『ロシナンテ』レビュー

子どもにとって最適の環境とはどんなものだろうか。両親が仕事していて家にいなくても生活は安定しているのと、両親の仕事がまちまちで生活が不安定でも家にいてくれるのと。
つまり子どもにとっての幸せとは何かを描いていて、ケン・ローチの『家族を想うとき』と似たテーマ性を感じる作品といえる。
両親は息子の治療費もままならない状態で経済的に不安定ななかでも引っ越し先を探しているが、その引っ越し先は見つかっていない。
時間が経ち、引っ越しのために荷物を片付けていっているが、結局まだ引っ越す目途がたたずズルズルとしているうちに、新たなトラブルが発生する。
貧困でもないし、裕福でもないが中間層というのも少し違う家族所得世帯がグラグラした吊り橋を渡っているといった感じだろうか。だからこそ、ひとつトラブルが発生すると泥沼化してしまい、また軌道修正すのが難しく、貧困層になってしまう。そういった不安が常にある家庭というのは、決して珍しくはないはずだ。
大人から見た経済不安という苦痛の日々と反比例するかのように、両親との時間が増えたことに対して嬉しく思う子どもの想いが重なり合わない微妙な距離感で描かれていく。
大人は難しく考え過ぎてしまうが、答えはすぐそこにシンプルなかたちであるのに、気づけない。
気づいたとしても、そうすることへの不安もある。
点数 80

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