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この映画語らせて!ズバッと評論!!『愛ちゃん物語♡』雑な設定かと思わせて、実はそれ自体がギミックとして機能する?!!

この映画語らせて!ズバッと評論!!『愛ちゃん物語♡』雑な設定かと思わせて、実はそれ自体がギミックとして機能する?!!

作品情報

仕事人間の父・鉄男に、極度な束縛状態で育てられた16歳の愛ちゃんは自由を知らない。父親とはメールだけの関係で、友達もいない彼女は、ある日、聖子さんに偶然出会う。ふたりは、一緒に過ごすうちに家族のような、友達のような関係になっていくのだが……。

『愛ちゃん物語♡』レビュー

大野キャンディス真奈の世界観とセンスが炸裂する作品であり、こういったインディーズ系作品の雰囲気が好きだという人も多いだけに、そういった趣味・思考の人には刺さる作品だ。

どうしても製作費の問題によるチープさ隠し切れないし、独特の間の使い方や、素人を適当に連れてきたかのようなレベルの俳優たちの演技は、観ていられないほどの酷があって、そういった要素がごった煮された結果のアングラ臭は漂うものの、描いていることは、実に真っ当な人間ドラマである。

超過保護の愛ちゃんトランスジェンダーか女装趣味がある男性なのかがよくわからない聖子と出会う。しかし、その聖子のビジュアルが、愛ちゃんの生き別れた母親の姿と同じというミステリー要素がある。

抑圧されてきた自我の解放や女の子から女性への成長過程など、表面上のテーマとは別に、裏テーマとして「記憶」の真実と幻想が描かれている。

多くは説明されないため、雑な設定がランダムに散りばめられて、総合的に見るとセンスを感じさせるようなフワッとさせるためなのかと思うし、そういった側面もあるはずなのだが、実はその雑でふざけているいるような設定に困惑する観客の視点と、愛ちゃんの視点が絶妙にリンクするようになっているのだ。

愛ちゃんの視点で展開されるものの、その出来事が未来からの回想の可能性もある。そうなると、登場人物たち学校の生徒たちの子どもらしさの無さといった、かなり気になる部分も結果的に「回想だから」とカバーできてしまう。

私たちの記憶は決して正しいものとは限らない。幼少期や学生時代の不確かな記憶と現実の記憶の混合によって構築れている。

そんな記憶の構造を巧みに利用して、常に幻覚を見ているような、不思議な感覚でありながら、どこか哲学的な物語を完成させたのだ。

点数 76

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