作品情報
あみ子はちょっと風変わりな女の子。優しいお父さん、いっしょに遊んでくれるお兄ちゃん、書道教室の先生でお腹には赤ちゃんがいるお母さん、憧れの同級生のり君、たくさんの人に見守られながら元気いっぱいに過ごしていた。だが、彼女のあまりに純粋無垢な行動は、周囲の人たちを否応なく変えていくことになる。誕生日にもらった電池切れのトランシーバーに話しかけるあみ子。「応答せよ、応答せよ。こちらあみ子」―――。奇妙で滑稽で、でもどこか愛おしい人間たちのありようが生き生きと描かれていく。ひとり残された家の廊下で。みんな帰ってしまった教室で。オバケと行進した帰り道で。いつも会話は一方通行で得体の知れないさびしさを抱えながらも、まっすぐに生きるあみ子の姿は、常識や固定概念に縛られ、生きづらさを感じている現代の私たちにとって、かつて自分が見ていたはずの世界を呼び覚ます。観た人それぞれがあみ子に共鳴し、いつの間にかあみ子と同化している感覚を味わえる映画がここに誕生した。
『こちらあみ子』レビュー
子どもの視点から、周りの出来事が淡々と描かれてく物語。
今作で起こる出来事のほとんどが、詳細には語られない。母親が子どもに対して敬語なのは再婚だからだろうし、お腹にいたはずの赤ちゃんが死産だったり……といったことが、あみ子の視点から描かれる。
次女のあみ子の下には子どもがいなかっただけに、弟や妹できるという感覚があまりわからない。それはあみ子にとって、金魚やペットのようなものと同等と感じていたのかもしれない。
生活環境が変わっていく、母親の様子がおかしい、父親もそわそわしている、兄は不良になってしまった。
それらの出来事も、子どもの目からはどう映っているのだろうか、そういった子どもの感じ方、見え方に寄り添って、何気ない日常、ちょっと変わった日常をコミカルにもシニカルにも描いていく。
どうしても私たち大人は、大人の目線で子どもを見てしまう。自分たちも子どもであったはずなのに、その感覚というのは、大人になればなるほど忘れていってしまう。
しかし子どもは、そもそも世界の見え方が違うのだから、時に寄り添って考えてあげることも大切なのだと、感じられるし、感じてあげようと思える作品だ。
点数 80
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