作品情報
主人公のハッチ(ボブ・オデンカーク)は、郊外にある自宅と職場の金型工場を路線バスで往復する、ルーティンで退屈な毎日を送っている。外見は地味で、目立った特徴もない。この世の理不尽なことはすべて全身で受け止め、決して歯向かうことはない。妻には距離を置かれ、息子からもリスペクトされることはない。世間から見れば、どこにでも居る、何者でもない男だ。ある日、バスの車内でチンピラと居合わせる。「ジジイ」呼ばわりされたことで、ハッチは遂にブチ切れ大乱闘。しかし、この事件はその後ロシアンマフィアへとつながり、街頭での銃撃戦、カーチェイス、と派手にエスカレートしていくのだった…。
『Mr.ノーバディー』レビュー
アクション映画の手法のひとつとして、元CIA、元スパイ、元殺し屋…というように「実は凄かった」というものがあって、今作もその類のものであるのだが、『ハードコア』の監督イリヤ・ナイシュラー、『ジョン・ウィック』の脚本家デレク・コルスタッドという「理論や哲学なんて関係ない!」と騒いでそうな、少し頭のよろしくないクリエイターが集結したことによって、今作も非常にシンプルな内容の作品に仕上がっている。
昔は凄い人だったのに、日々の生活の中で、すっかり落ちぶれてしまったが、ある出来事や事件が起きて、徐々に感覚が戻ってくるという入り口は、今まで映画でもドラマでもアニメでも散々、やり倒されてきた設定ではあるが、かつてのグラインドハウス的なノリの1作として観るのには申し分ない。
正にB級アクションといったところだが、映像技術の進化によって、スカスカな作品まで、それなりのスタイリッシュ・アクションに見えてしまうのだから、良い時代になったと言うべきなのだろうか…
過去に何をしていた人物なのかということもはっきりとは説明されない、今作の主人公ハッチ。あることがきっかけでトリガーが発動し、殺人マシンへと変貌するのだが、そのきっかけというのが、無理やりすぎて、かなり理不尽。
バスに乗ってきたチンピラに八つ当たりしてボコボコにしたことがきっかけで、ロシアンマフィアに復讐されて、家族も危険になるが、もはや自業自得である。
ここで気づいたのだが、日常生活から滲み出るような無害感というのが、観ているうちに私たちにも植え付けられていて、勝手に「いい人」「無害な人」というイメージを作り出してしまっていたから、このトリガーの発動方法には、無理矢理な感じがしてしまったのだが、そもそもハッチというキャラクターが以前はどんな人物だったのかがわからないのだ。
極端なことを言えば、殺人マシンのサイコパスで、人を殺すことに生きがいを感じている『マーダー・ライド・ショー』のファミリーのような精神構造の人物かもしれないことからも、ハッチの視点ではなく、やられるロシアンマフィア側の視点で観たほうが、実は筋としてしっくりきてしまうのだ。
そう考えてしまうと、常識の範囲内での想像というのが、当てはまらず、もはや何でもありという無敵な状態となっているのだ。
あとは身を任せて、ただ単純にアクション映画というシンプルなものを観てるだけ。まさに娯楽映画、B級映画の醍醐味でしかないのだ。
正に頭を空っぽにして楽しめるアクション映画である!
点数 74
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