作品情報
映像作家の宇治茶が監督・脚本・編集・キャラクターデザイン・作画・撮影を1人で担当し、アニメーションと劇画を融合させた「劇メーション」という表現方法を用いて完成させた異色長編アニメ。日本の山奥の村に暮らすアメリカ人少年のボビーは、数少ない友人であるあっくんと猫のデレクを連れ、遊びに出かける。その道すがら、娯楽施設「バイオレンス・ボイジャー」と書かれた看板を発見し、施設に足を踏み入れるボビーたち。そこで彼らが出会った少女・時子は、数日前からここから出られずにいるという。さらに、先客として迷い込んでいた村の子どもたちは、謎の白スーツを着た子どもの襲撃を受け、次々と捕獲されてしまう。時子の救出と復讐のために、ボビーたちが立ち上がるが……。ボビーの声を『魔法少女まどか☆マギカ』の悠木碧が担当するほか、「ココリコ」の田中直樹、「サバンナ」の高橋茂雄、田口トモロヲらが声優として参加。ナレーションを松本人志が務める。
『バイオレンス・ボイジャー』レビュー
漫☆画太郎と猫目小僧を融合させたような、キャラクターデザインによる長編劇メーションの第2弾。
2012年の『燃える仏像人間』から7年ぶりの新作ということで観ないわけにはいかないが、公開劇場数の少なさでソフト化を待つしかない状況で何故かリリースに1年以上かかった今作。
作品自体の好き嫌いはあるにしても、作画を宇治茶一人でしているのだから、仕事量は半端なく、描き込みも凄い点では、同じく少人数作画の『音楽』よりも手間はかかっている。
今回もなかなかぶっ飛んだ内容ではあるが、ビジュアルだけで押し通した『燃える仏像人間』の頃と比べると、ストーリーとしては王道であり、かなり内容はしっかりしている。
やたら毒々しいキャラクター達が気になる人もいるかもしれないが、かなりマイルドになっているし、バランスもとれているように思える。
実際問題として1枚絵だから、平面ではあるのだが、今回は色彩の部分でも立体感があって、画力も数段上をいっている。単純にアーティスト「宇治茶」の成長がみてとれる。
今回は吉本興業のバックアップがあるため、声優として吉本芸人が多数参加しているのだが、これは狙いもしれないが「サバンナ」の高橋茂雄が参加していることもあって、やたらNHK感が出てしまっていることによって、より内容の過激度が増している。
ボビーの元に起こる悲劇が、あまりにも悲しすぎて、このテイストの絵なのにも関わらず、感情移入をさせるというところまで到達したのだ。
後戻りできない悲しみの余韻を残すという点では、 実は文学的であり、良く言えばロアルド・ダールのようでもある。
賛否両論もあると思うが、日本を代表するアーティストのひとりとして「宇治茶」はもっと評価されるべきだと思う。
次回はもっと多くの劇場で公開してほしいものだ。
点数 77
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