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この映画語らせて!ズバッと評論!!『茜色に焼かれる』コロナ禍の日本をダイレクトに反映した映画!これはSFではなく今起きている現実…

この映画語らせて!ズバッと評論!!『茜色に焼かれる』コロナ禍の日本をダイレクトに反映した映画!これはSFではなく今起きている現実…

作品情報

この世界には、誰のためにあるのかわからないルールと、悪い冗談みたいなことばかりがあふれている。誰もが自身を 偽り、まるで仮面の生活を強いられているかのように。そんな、まさに弱者ほど生きにくいこの時代に翻弄されている一 組の母子がいた。7年前、理不尽な交通事故で夫を亡くした母子。母の名前は田中良子。彼女は昔演劇に傾倒しており、 お芝居が上手だ。中学生の息子・純平をひとりで育て、夫への賠償金は受け取らず、施設に入院している義父の面倒も みている。経営していたカフェはコロナ禍で破綻。花屋のバイトと夜の仕事の掛け持ちでも家計は苦しく、そのせいで息 子はいじめにあっている。数年振りに会った同級生にはふられた。社会的弱者―それがなんだというのだ。そう、この全 てが良子の人生を熱くしていくのだからー。 どんな苦境に対しても何事もなかったかのように「芝居」を日々続ける良子。哀しみと怒りを心に秘めながらも、わが子 への溢れんばかりの愛を抱えて、気丈に振る舞うそのたくましくも可憐な姿に、どうしようもなく胸が打たれる、心が熱くな る。これは、現代日本を正面から見つめた物語。そして、ひとりの女性がそんな時代にあらがうように生きる物語。 

『茜色に焼かれる』レビュー

今作の注目点は、新型コロナウイルスというものが日常化した、正に今の時代をダイレクトに反映させたということである。

さらに主人公の良子は、政治家が起こした事故によって、夫を突然失った。この設定は、おそらく旧通産省工業技術院の元院長が起こした「池袋暴走事故」がモデルであろう。

今作は「新型コロナ」と「裁かれない権力者」という、2大「理不尽」を描いている。

良子は夫が亡くなった際の賠償金も放棄していて、国の汚いお金を貰いたくはないという考えではあり、綺麗ごととも思われがちな自分のポリシーを貫くが故に、生活は苦しい。そのうえ新型コロナの影響で、経営していたカフェも閉めて、風俗で働いている正にどん底生活。

極端なダブルパンチかもしれないが、シングルマザーであるならば、あり得ないことではないことは、かなり残酷であるが、多少は誇張されているとしても、これは今の日本、世界で起きている現実なのだ。

コロナの影響で会社が倒産した人、職を失った人、生活ができない人が数えきれないほどいて、国が悪い、政府が悪い、とばっちりを受けるのは、いつも貧困層…それはそうなんだけど、そんなことを言って立ち止まっていても、結局は愚痴にしかならず、愚痴を言っているだけで、生きていくことができない。

中には自ら命を絶ってしまう者もいる。

どんな理不尽な世界であっても、とにかく一日一日を生きていくことしかできない。特に守るものがあれば、立ち止まることも許されない。

何が正しいのか、何が間違っているのか…そんな境界線があやふやな世界でも息子に生きること、将来への希望をもたせたいと願う、強い母の姿がそこにはあって、良子は不器用かもしれないし、もっと上手くできることがあるかもしれないかったのかもしれないが、良子ができると思ったことをひたすらするしかなかったが、誰もが起用に生きられるわけではないということも体現しているようである。

これは極端な例で言うと『ウォーキング・デッド』でもテーマのひとつとしても、実は描かれていることであって、絶望に包まれた、夢や希望が存在しない世界においても、親は子供に対して、生きる道を示していかなければならないという使命があるということだ

本来、ゾンビ映画、パンデミック映画、ディストピア映画のようにフィクションの世界でしかなかったものが、現実に起きているということを映画という俯瞰でこの世界の現状を改めて観ることで、決して良子というキャラクターは、模範像ではないが、不条理な世の中を変えていくには下を向いているのではなくて、上を向いて行くしかないことを感じさせてくれる作品であり、今の時代だからこそ観てほしい作品であることは間違いない!!

CREDIT

出演

尾野真千子 和田 庵 片山友希 / オダギリジョー 永瀬正敏  

スタッフ

監督・脚本・編集:石井裕也

『茜色に焼かれる』フィルムパートナーズ:朝日新聞社 RIKIプロジェクト

製作幹事:朝日新聞社 制作プロダクション:RIKIプロジェクト 

配給:フィルムランド 朝日新聞社 スターサンズ

2021年/日本/144分/カラー/シネマスコープ/5.1ch R-15+ 

©2021『茜色に焼かれる』フィルムパートナーズ  akaneiro-movie.com

公開日:5/21(金)、TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開

点数 82

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