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【ちょこっとレビュー】ちょっと変な自分探しは周りを巻き込み思わぬ方向へ……『バーナデット ママは行方不明』

【ちょこっとレビュー】ちょっと変な自分探しは周りを巻き込み思わぬ方向へ……『バーナデット ママは行方不明』

【ちょこっとレビュー】

ジャック・ニコルソン主演で映画化された『さらば冬のかもめ』(1973)の続編小説を映画化した、リチャード・リンクレイターの前作『30年後の同窓会』(2017)は、リンクレイター作品としては、久しぶりに重い内容の作品ではあったが、リンクレイター作品は日常にある大小の問題をシュールな温度感でコミカルに、ときにシリアスに描きながらも核心をついていくというもの。とくにそのなかで一貫して大切に描いているものは、「時間」である。

代表的なところでは、イーサン・ホークとジュリー・デルピー主演による「ビフォア」シリーズである。「ビフォア」シリーズでは、たまたま出会った男と女の物語を何年後かの節目、節目で見せることで多くを語らずとも「時間」の流れや残酷さを表現しているのだ。それを突き詰めた、反則的とも言える作品は、実際に12年間も撮影することで完成させた究極のホームビデオ映画『6才のボクが、大人になるまで。』(2014)だろう。

今作の主人公バーナデットは、もともと建築業界のカリスマ的存在だったのが、ある出来事をきっかけに別の道に進むことになる。それはある視点からでは、決して不幸な道ではなく、そんな日常も悪いものではないと感じている。

しかしバーナデットのなかでは、建築業界を離れたその瞬間から、一部の時間、感情が停止したまま。時間が経ち、娘のビーも自分の意思をしっかり持った女性に育っていて、子育てがひと段落したバーナデットが、主婦という選択をした瞬間から失われた時間軸について見つめ直す。

だからといって今の環境から激的に生活を変化させる勇気もなければ、きっかけもない。自分のペースで無くしてしまったもの、止まってしまっているものを始めるバーナデットの姿は、他者に違和感をあたえてしまう。そしてそんなちょっと変な自分探しが思わぬ方向に向かってしまう……。

【ストーリー】

シアトルに暮らす主婦のバーナデット(ケイト・ブランシェット)。夫のエルジー(ビリー・クラダップ)は一流IT企業に勤め、娘のビー(エマ・ネルソン)とは親友のような関係で、幸せな毎日を送っているように見えた。だが、バーナデットは極度の人間嫌いで、隣人やママ友たちとうまく付き合えない。かつて天才建築家としてもてはやされたが、夢を諦めた過去があった。日に日に息苦しさが募る中、ある事件をきっかけに、この退屈な世界に生きることに限界を感じたバーナデットは、忽然と姿を消す。彼女が向かった先、それは南極だった……。

【作品情報】

監督・脚本:リチャード・リンクレイター

脚本:ホリー・ジェント、ヴィンス・パルモ

出演:ケイト・ブランシェット、ビリー・クラダップ、エマ・ネルソン、クリステン・ウィグほか

配給:ロングライド提供:バップ、ロングライド

2019年/アメリカ/英語/カラー/ビスタ/108分/原題:Where’dYou Go, Bernadette/日本語字幕:石田泰子

公式サイト:longride.jp/bernadette/

© 2019 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.Wilson Webb / Annapurna Pictures

2023年9月22日(金)新宿ピカデリーほか全国公開

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