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『わたしは最悪。』ヨアキム・トリアー監督のキャスティングにかけた拘りと想い!!

『わたしは最悪。』ヨアキム・トリアー監督のキャスティングにかけた拘りと想い!!

ノルウェーの〈異彩を放つラブストーリー〉が、2021 年 7 月から現在まで、ヨーロッパ、アメリカ、アジアと、地球を一周する勢いで数多くの国々で上映され、一大ムーヴメントを巻き起こしている。主演のレナーテ・レインスヴェが第 74 回カンヌ国際映画祭女優賞を受賞したのをスタートダッシュに、数々の栄えある賞を席巻し、第 94 回アカデミー賞®でも脚本賞と国際長編映画賞にノミネートされた。

さらに、アメリカでは限定公開にもかかわらず、2020〜2022 年公開の外国語映画の中で、日本でも大ヒットした『パラサイト 半地下の家族』、そして『燃ゆる女の肖像』に続く、スクリーンアベレージ第 3 位という記録を打ち立てた。

主人公の女性の 20 代後半から 30 代前半の日々の暮らしを描いた物語なのに、メディアからは、「痛烈」「破壊的」「センセーショナル」「スリリング」といった、何ともミスマッチな熱いレビューが殺到。リチャード・カーティスやポール・トーマス・アンダーソンら名だたる名匠も、「完全なる傑作」「The Best Movie」と大興奮。いったいどんな映画? という疑問に、トップ俳優から「人生初」との証言も飛び出すエモーショナルな映像体験で答えてくれる、世界の映画ファンのオールタイム・ベスト・ムービーが、ついに日本も虜にする!

本当に語りたい物語、本当に演じてほしい俳優

本作が生まれたきっかけについて、ヨアキム・トリアー監督は、「今この時、僕の人生において、心の底から語りたい物語は何だろうと考えた。そしたら、こんな人生を送りたいという夢と、実際はこうなるという現実に、折り合いをつけるというストーリーが浮かんだ。

そして、ユリヤというキャラクターが閃いた。自然体の女性で、自分を探し求めると同時に、自分を変えられると信じている。でも、突然、時間と自分自身の限界に向き合うしかなくなる。

人の一生で出来ることは無限ではないけれど、僕は彼女の強い願いには共感している」と語る。また、本作を作ったもう一つの動機は、ユリヤを演じたレナーテ・レインスヴェだったと、トリアー監督は打ち明ける。「今回はレナーテのために脚本を書いた。彼女は 10 年前、僕の『オスロ、8 月 31 日』で端役を演じてくれた。当時まだ若かったけれど、非常に特別なエネルギーを放っていた。その後、彼女は多くの役柄を演じてきたけれど、主役は一度もなかった。

それで、僕が彼女を主人公にして脚本を書くことにしたんだ。ユリヤのキャラクター造形、複雑な心情を作っていく上で、彼女に助けられたことがたくさんある。レナーテは大胆で勇敢、平気で不完全な部分を見せることが出来て、虚栄心が無い。明るさと深みのバランスが独特で、コメディもシリアスなドラマも演じられる素晴らしい才能を持っている」

主人公に深く関わる二人の男のキャスティング

アクセルを演じるのは、トリアー監督の『リプライズ』と『オスロ、8 月 31 日』でも主演を務めたアンデルシュ・ダニエルセン・リーだ。自身の分身的存在でもあるリーのことを、トリアー監督はこう讃える。「アンデルシュは僕より少し年下だから、彼のために役柄を執筆する時、常に僕が過去に経験したことを反映させている。

僕の作品群を通して、彼が年齢を重ねていく姿を見るのが好きだ。『リプライズ』での彼は野心あふれる若者で、『オスロ、8 月 31 日』では 30 代で道を見失う男だったし、本作では 40 代になり、安定した人生と家庭を年下の女性と作ろうとしている。

映画をたどっていくと、彼の顔に時間の積み重ねを見ることが出来る。アンデルシュは世界有数の素晴らしい俳優で、僕は彼を尊敬しているし、友人でもある。お互いに何でも包み隠さず話をするし、彼が演じるキャラクターについてもディスカッションを重ねる。本作では、レナーテをうまく導いてくれた」アイヴィンを演じるヘルベルト・ノルドルムは、ノルウェーでは多くの映画や TV シリー
ズに出演している、コメディを得意とする最も有名な俳優の一人だ。

同時に、シリアスな舞台の俳優でもあり、最近では「ハムレット」に出演している。トリアー監督は、「彼がどれだけ素晴らしいか、僕は知っていた。今風の愉快な若いオスロっ子だ。本作で彼が演じるキャラクターと同じだね。自分の性格により近い役柄を演じるのは、これが彼の人生で初めてのこととなる。ヘルベルトは若く、才能があり、温かい人柄だけど、アイヴィンの弱さも見せることが出来る。彼は、もっと知的でもっと古い考え方を持つアクセルを演じるアンデルシュと、興味深い対比を作り出してくれた。とても身体能力の優れた俳優でもあり、複数の場面でおかしさを加えてくれた」と絶賛する。

トリアー監督にとって、「ユリヤは私だ」──なのか?

様々なインタビューで、「ボヴァリー夫人は私だ」という有名な言葉を遺したフローベルになぞらえて、「ユリヤはあなた自身のことですか?」と聞かれるトリアー監督は、こう締めくくる。

「あるキャラクターについての物語を作れば、そのキャラクターは、ある意味では自分になるね。俳優と同じように、自分自身とキャラクターの区別がなくなる。それは、物語作りにおける大いなる贈り物だ。キャラクターたちを通じて、失敗、願い、恋愛についての感覚など、自分自身を理解しながらさすらうことを許される。僕は自分の人生を過ごしながら、短い間だけれど、30 歳の女性になれた。それは、解放される気分だったね。ユリヤはレナーテではないし、僕でもない。他の存在だ。でも、フローベルの引用は理解出来るし、共感するよ。自分とキャラクターに、少しも共通点がないと感じるような映画を、作ろうとは思わないからね。アクセルとアイヴィンの中にも、僕の一部が含まれている。何かを作る時、自分のことを理解しているとは限らない。作る過程において、理解していくようになればと期待するね」

監督:ヨアキム・トリアー 『テルマ』(17)、『母の残像』(15)

出演:レナーテ・レインスヴェ、アンデルシュ・ダニエルセン・リー、ハーバード・ノードラム

© 2021 OSLO PICTURES – MK PRODUCTIONS – FILM I VÄST – SNOWGLOBE – B-Reel ‒ ARTE FRANCE CINEMA

2021 /ノルウェー、フランス、スウェーデン、デンマーク

後援:ノルウェー大使館

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