【ちょこっとレビュー】
日本におけるジャズミュージックが全盛期であった60年代を舞台に、夢を追いかける男と、夢を諦めかけている男の両極端に思えるかもしれないふたりの男の物語。
このふたりの男にはあるギミックが仕掛けられている。それぞれが過去と現在を生きているかのように演出されていて、ふたりの運命は常に交差的に描かれていることで、ファンタジーだったり、ミステリーのような側面も。
そういった要素も少しありながらも、今作は雰囲気を楽しむ映画であることは間違いない。
煙草の煙が漂う中で、聴こえるジャズのサウンド、そしてそこにはお酒がある……といった、ある意味ステレオタイプともいえる日本におけるジャズのイメージを真正面から感じさせる和製ノワールが誕生した。
そして対照的でありながら同じ運命を感じさせるような池松壮亮の演じ分けにも注目してもらいたい。
【ストーリー】
昭和 63 年の年の瀬。夜の街・銀座では、ジャズピアニスト志望の博(池松壮亮)が場末のキャバレーでピアノを弾いていた。博はふらりと現れたチンピラの“あいつ”(森田剛)にリクエストされて「ゴッドファーザー 愛のテーマ」を演奏するが、その曲が大きな災いを招くとは知る由もなかった。“あの曲”をリクエストしていいのは銀座界隈を牛耳る熊野会長(松尾貴史)だけ、演奏を許されているのも会長お気に入りの敏腕ピアニスト、南(池松壮亮、二役)だけだったのだ。博はジ
ャズが弾ける場所を求めて、キャバレーを辞めて高級クラブのハウスバンドを目指す。一方、高級クラブをかけもちする南は、ろくに音楽を聴かない酔客たちの前で演奏する毎日にウンザリしていた。夢を追う博と夢を見失った南。ふたりの運命はもつれ合い、先輩ピアニストの千香子(仲里依紗)、銀座の高級クラブ「スロウリー」のバンマス、三木(高橋和也)、アメリカから来た歌手のリサ(クリスタル・ケイ)らを巻き込みながら、時空が交錯するミステリアスな一夜を彩っていく。
【作品情報】
出演:池松壮亮、仲里依紗、森田剛、クリスタル・ケイ、松丸契、川瀬陽太、杉山ひこひこ、中山来未、福津健創、日高ボブ美、佐野史郎、洞口依子、松尾貴史、高橋和也ほか
監督:冨永昌敬
脚本:冨永昌敬、高橋知由
音楽:魚返明未
原作:南博『白鍵と黒鍵の間に』(小学館文庫刊)
配給:東京テアトル
製作:「白鍵と黒鍵の間に」製作委員会
©2023 南博/小学館/「白鍵と黒鍵の間に」製作委員会
10月6日(金)テアトル新宿ほか全国公開
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