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THE映画紹介『ドリーム』60年代の黒人差別と女性差別を能力と技術で突破する!!

THE映画紹介とは?

THE映画紹介とは…劇場公開中には観れなかったもの、公開中に観たんだけれども…レビューする前にリリースされてしまったもの、単純に旧作と言われるものを独自の偏見と趣味嗜好強めに紹介するもの。

アメリカ映画、インド映画、ドイツ映画、アジア映画、アニメ、ドキュメンタリー….なんでもあり!!

今回紹介するのは『ドリーム』

作品情報

1962年に米国人として初めて地球周回軌道を飛行した宇宙飛行士ジョン・グレンの功績を影で支えた、NASAの3人の黒人系女性スタッフ、キャサリン・ジョンソン、ドロシー・ボーン、メアリー・ジャクソンの知られざる物語を描いたドラマ。ソ連とアメリカの宇宙開発競争が繰り広げられていた61年、米バージニア州ハンプトンにあるNASAのラングレー研究所に、ロケットの打ち上げに必要不可欠な計算を行う黒人女性グループがいた。なかでも天才的な数学の才能をもつキャサリンは、宇宙特別研究本部の計算係に抜てきされるが、白人男性ばかりのオフィス環境は、キャサリンにとって決して心地よいものではなかった。一方、ドロシーとメアリーもそれぞれ、黒人であるというだけで理不尽な境遇に立たされるが、それでも3人はひたむきに夢を追い続け、やがてNASAの歴史的な偉業に携わることとなる。キャサリン役で『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』『ハート・オブ・マン』のタラジ・P・ヘンソンが主演し、ドロシー役を『マー ―サイコパスの狂気の地下室―』『ドクター・ドリトル』のオクタヴィア・スペンサー、メアリー役を『ムーンライト』『ハリエット』などにも出演している歌手のジャネール・モネイが演じた。監督は『ヴィンセントが教えてくれたこと』のセオドア・メルフィ。ミュージシャンのファレル・ウィリアムスが製作と音楽を担当。

『ドリーム』基本情報

2016年製作/127分/G/アメリカ
原題:Hidden Figures

監督: セオドア・メルフィ

出演 : タラジ・P・ヘンソン、オクタヴィア・スペンサー、ジャネール・モネイ、キルスティン・ダンスト、ケヴィン・コスナー、ジム・パーソンズ ほか

短評

私が今作を初めて観たのは、日本公開が決定する前で、ハワイ行きの飛行機中だった。

先日、ミュージカル舞台化されることが決定したことから、改めて観てみることにしたのだが、やはり傑作だった。

日本公開時には『ドリーム 私たちのアポロ計画』というサブタイトルを付けて公開する予定だったが、このサブタイトルに問題があり、削除されることになったのだが、何が問題かというと、映画の中て扱っているのは、アポロ計画ではなく、マーキュリー計画なのだ。

またキャラクター造形や、時代設定が少し史実と異なることで一部からは批判を受けた作品ではあるが、今作は別にドキュメンタリー映画ではない。実話ベースではあるがフィクションである。

今作が描こうとしていることは、単に史実に基づいてドキュメンタリーのように機能する作品ではなく、差別や性別の問題を乗り越えることで逆転していく、サクセス・ストーリーという劇映画として観るべき映画なのである。

実際には1957年前後の話だったらしいが、それを60年代前半にしたのにも理由がある。おそらく黒人の市民権というのが、ある程度、馴染みはじめた頃にしたかったのだろう。

60年代の黒人の扱いを描いた作品としては、『ヘルプ 心がつなぐストーリー 』『グリーンブック』『ヘアスプレー』『ドリームガールズ』などと多くあるが、60年代というのは、人々の意識の中で差別はいけないという想いが芽生えながらも、古くから受け継がれてきた概念が邪魔をすることで、なかなか素直にはなれないが、確実にアメリカの中の黒人に対する意識はグラデーションのように変わりつつあった時代であるため、ドラマチックな演出がしやすいというのもあるだろう。

黒人であることと同時に、女性であることが、彼女たちにとって、とてつもなく高いハードルとなって、立ちはだかるのだが、それを越えたときの爽快感というのは、正にエンターテイメント映画といってもいいだろうし、1回や2回ではなく、連続する「見返し」シーンは感動させられる。

キャラクター構造と人間関係の描き方が見事で、同じ目的に進むことで、人種や性別は関係なく、能力や技術、才能がある者が認められていくというのは、みんな大好きな展開ではないだろうか。

分かりやすい変化していくキャラクターとして、ケヴィン・コスナーやキルスティン・ダンストがスパイスとしての役割を果たす中で、『ビッグバンセオリー』のシェルドン役でお馴染み、ジム・パーソソンズの存在は重要だ。このキャラクター構造は正に完璧。

シェルドンも目の動きで感情を表現することがあったが、今作では、その目の微妙な動き、泳がせ方をすることで感情を見事に変化させている。

多くを語らないのに、キャサリンを見る冷たい表情が差別からではなく、あくま仕事ができるのか、できないのかということを見定めているような視線であり、それが徐々に認め、同じ同僚であることを認識していくという一連の流れをセリフではなく、ほとんど表情で変化で表現するというのは、見事だし、ジム・パーソンズは『ビッグバン・セオリー』や『ハリウッド』の変人イメージがあるかもしれないが、演技の天才だと思う。

ストーリーの構造的にも、日本のドラマや映画なんかでも好まれるテイストだと思う。日本の場合は、人種よりも家庭環境や貧困に設定されることが多いが、基本的にサクセス・ストーリーにおいての、観ている側が爽快感を感じられる構造は同じである。

今作の場合は、3人のキャラクターそれぞれに、立ち向かうべき相手や問題が設定されていることで、それを越えていく後半の展開には胸が熱くなるだろう。

史実どうこうではなく、人種と性別の壁を突破していく、エンターテイメントに仕上げているのだ。

これをミュージカルにしようだなんて最高ではないだろうか。

1960年代の黒人社会を描いた作品

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