作品情報
マーの家は、誰でも大歓迎。ただ、無事に帰宅出来るかどうかは分からない・・・。 スー・アンは、静かなオハイオのとある街で自分の殻にこもって暮らしている孤独な女性。ある時、地元の女子高生が通りかかったスー・アンに自分の代わりに酒を買ってくれるよう頼む。それをきっかけに彼女は、パーティができるように自宅の地下室を提供する。但し、彼女の家の簡単なルールに従わなければならない――誰かはしらふでいる、文句を言わない、二階に上がってはダメ。そして、彼女のことを「マー」と呼ぶ。そんなマーのもてなしで楽しい時間が過ぎていくが、やがてマーの態度が変わり始める・・・。 監督は『ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜』『ガール・オン・ザ・トレイン』のテイト・テイラー、出演は『ドクター・ドリトル』『ルース・エドガー』のオクタヴィア・スペンサー、『美女と野獣』『ワンダー・ウーマンとマーストン教授の秘密』のルーク・エヴァンス、『プッシーキャッツ』『ドッジボール』『シンデレラストーリー3:ワンス・アポン・ア・ソング』のミッシー・パイル、『花嫁はエイリアン』『ジェム&ホログラムス』のジュリエット・ルイスなど
発掘!未公開映画研究所とは?
宗教性の問題、出演者の知名度、お笑いの感覚の違い…などなどの理由によって、日本では公開にいたらない作品が多く存在する。アカデミー賞にノミネートされている作品でも未公開作品は多い。
それもそうだろう、逆にアメリカやフランスで日本の映画が何でも公開されていると言えばそんなわけもなく、全体的に見て1割にも満たないだろう。
日本はそんな中でも割と海外の作品を公開している珍しい国であって、そんな中でもやっぱり公開されない映画というのは山のように存在する。
「発掘!未公開映画研究所」はそんな映画を発掘していくというもので、その中でも更に知名度が低いものを扱っていくつもりだが、必ずしも良作ばかりではない、中には内容がひど過ぎて公開できなかったものもあるのでご注意を!!
今回紹介するのは『マー ―サイコパスの狂気の地下室―』
短評
高校時代にトラウマを抱えた中年女性スー・アンがあることをきっかけに、恐ろしい方向に変貌していく様子を描いた作品でジュリエット・ルイスやルーク・エヴァンスという、それなりに豪華な俳優が揃った作品ではあったが、日本では未公開のままDVDスルーとなった。
エリカと娘のマギーが離婚を機にエリカの故郷に出戻りしたことで、マギーは転校生として地元の同世代と早く馴染めるように、酒やドラッグといった、いかにも遊んでいる若者グループに属するべく、アルコールを購入しようとしても未成年だから購入できないということで、近くにいる大人にアルコールを購入してもらおうと、なかなか古典的な方法でアルコールを購入しようとしていたところに、たまたま声をかけたのがオクヴィア・スペンサー演じるスー・アンだったのだ。
スー・アンは、そのグループの中に学生時代に嫌がらせをうけた相手の息子がいることに気づき、とっさにある計画を思いつくのだが、この計画が詳細にどんなものかというのがフワッとしている部分がありすぎるといえば間違いなのだが、人間が偶然な出来事をきっかけに過去に蓋をしていた復讐心を呼び起こしてしまう偶然の恐ろしさという部分も描かれている。
偶然の出会いがスーをサイコパス化させたのかと思うかもしれないが、実はスーは実の娘を家の中で監禁して、重病だと言い聞かせ、薬を投与していたのだ。これは作品の中で直接的に語られるシーンはないが、2015年に起きたジプシー・ブランチャード事件を彷彿とさせる。
ジプシー・ブランチャード事件というのは、ジョーイ・キング主演でドラマ化もされた実在の事件であり、世間からの注目と寄付金集めのために、娘のジプシーに重病だと思い込ませていたディーディー・ブランチャードが、それが嘘だと気づいたジプシーの復讐によって殺害されるに至った事件である。
今作は、その事件をモデルにしている部分はあるが、軸となるのは、そこではない。なぜ事件をモデルにしたようなシーンがあるかというと、スーはもともとサイコパス的一面を持ち合わせていたことと、人に注目されることに執着があり、その目的のためには、自分の娘も使うという異常さを表すためにモデルにすることで観客になんとなくバックサイドを読み解かせるようにしていたのだ。
しかし、問題点としてジプシー・ブランチャード事件のアメリカ外での知名度があり、事件を知っていないと何故、スーが娘を監禁しているのかが理解できないかもしれないのだ。
スーには復讐計画とは別に学生時代では味わえなかった、中心的人物になるという願望もあり、アルコールを隠れて飲める場所を提供した自分が人気者になっていると思いこみ、次第に仕事着ばかりだった地味な服装も17歳のような服装やメイクに変貌していくという部分にも心の変化というのは、表れていたりと、バックサイドを考えていくと、よりサイコパスに変貌していく様子というのは、感じられることはあるが、分かりやすい部分としては、メールや電話への返答がないと過剰に連絡を上乗せしたり、相手の都合を考えないで着信を連発してくる人は日常生活でもいたりする。
近所や知り合いのおばさんでおせっかいな人が身近にいるかもしれないが、その人の学生時代や過去を知っているかといえばそうでもないし、本人が話したことがあったとしてもそれが本当かなんてわからない。
今作は、そんな誰の日常にでもある恐怖を描いた作品でもあるのだ。
おせっかいおばさんの気持ちを踏みにじった若者たちを心理的に追い詰めていくという前半のテイストのままで進んでいれば、オクタヴィア・スペンサーの演技力もあり、高評価を得られた作品なのだと思うが、後半につれて、安っぽいサイコスリラー映画へと変貌してしまったことが今作の失敗の原因だったように思える
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