作品情報
同じ屋根の下に暮らす3世代の女性が、自分を大切にしようと心に決め、人生で初めての行動に出る。楽しみながら、手探りで、3人は自分探しの旅に出発する。
『スイート・カーラム・コーヒー 〜人生の交差点〜』レビュー
映画もドラマも、特に配信系の作品に関しては、インドにおける女性の立ち位置の変化が描かれることが多く、女性を主体にしたドラマは結局のところミソジニーに行き着いてしまう。
それは、そもそもなぜだろうか…..
7月6日から配信が開始されたAmazonドラマの『スイート・カーラム・コーヒー 〜人生の交差点〜』も3世代の女性の視点からインドの女性の生きづらさがコミカルにもシリアスにも描かれている。
タミル映画で活躍するベテラン女優ラクシュミーとマドゥー、そしてマラヤーラム映画界において注目の若手女優として人気の高く、日本でも公開された『ジャッリカットゥ 牛の怒り』にも出演していたシャーンティ・バーラクリシュナンという組み合わせもなかなか興味深い。
バケーションを通して、知らなかった世界を目にすることで、自分たちの置かれている環境が多くのパターンの中のひとつであり、悩むのではなく、前向きに進んでいこうと思わせる一方で、地方のおもしろさを伝えるロードムービー(映画じゃないからロードドラマ?)的な側面もある作品だ。
言語や地域性の違いもあるし、まだまだ保守的な概念が支配する村などでは、時代錯誤な世界が展開されたりするが、それはアメリカでも州によっては保守的なところや宗教が支配するところもあるし、日本にもあるはずだ。
そういった同じ国であっても異国感がある地域をモデルにホラーなどに変換することも多いが、インドは特にそれが強く表れていて、国内旅行のはずが他国旅行に思えてしまう要素が多く、ロードムービーには最も適した国ともいえるだろう。
今作はタミルのドラマ、つまり南インドドラマである。近年、北よりも南インド映画の方が強く、北が南っぽい作品を作る傾向が出てきたといわれているし、一部ではその通りなのだが、実はドラマ界においては真逆に動きがある。
もともとタミル映画は、北の南の中間的なところを行ったり来たりしている状態ではあるが、それはあくまでも娯楽作の興行的視点からの見解に過ぎず、近代的な作品に関しては、明らかに北を意識していて、現代舞台の多いドラマ界では、それが明確に表れているのだ。
今作のように2世代、3世代の女性の複数視点から描いた作品は、会話だけでもバックボーンを想像させ、その価値観の違いが時代の変化を感じさせるというのもあって、プロットとして組込みやすく、直接的にも感覚的にも断片的にも多くなってきた。
例えばカジョールが主演を務めたNetflix映画『トリバンガ ~踊れ艶やかに~』という作品もあるが、こちらは割とシリアス路線だったのに対して、今作の場合はコメディ路線でシリアスな部分は抑え味ではあるものの、どうしてもドラマという長尺の中では、避けきれない問題としてミソジニーに触れることになる。
これはもちろんまだまだインドの女性が家父長制に苦しんでいることと、配信作品のユーザーが女性や若い世代が多いことにも関係してくる。それに加え、インドが世界に変化する価値観と概念をプロパガンダ的に発信している部分もあったりするが、その結果として、逆に増えすぎてしまっているという問題もある。
社会にメッセージを発信するという意味では大きく機能しているのだが、女性が主人公の作品のプロットがどれも似たようなものになってきているのも事実であるし、それにはまだまだ男性の映画人が女性の物語を描いているということも影響している部分もある。
ただそれはあくまで過渡期である現在地であるということであって、そこから脱しようと、作品の質とリアリティを向上させるために、今後より多くの女性映画、ドラマ人の活躍の場が広がっていくに違いないだろう。
思い切って、限界を振り切った「フォー・モア・ショット・プリーズ!」のような作品は、バックステージも女性が主体だからこそ描けたものに違いない。
そういった数々のジレンマから脱しようとして模索しているのが、どの作品を通しても伝わってくるだけに、インドドラマ界が今後どう変化していくのかが楽しみでならない。
近い将来、インドドラマ革命が起こるということだけは言っておこう。
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