
作品情報
物語の舞台は17世紀フランス。 剣の腕前だけでなく、優れた詩を書く才能をもつフランス軍きっての騎士シラノは、仲間たちからも絶大なる信頼を置かれていたが、自身の外見に自信が持てず、想いを寄せるロクサーヌに、心に秘めた気持ちをずっと告げることができない。そんな胸の内を知らないロクサーヌはシラノと同じ隊に配属された青年クリスチャンに惹かれ、こともあろうにシラノに恋の仲立ちをお願いする。複雑な気持ちを抱えながらも、愛する人の願いを叶えようとするシラノは、溢れる愛情を言葉で表現する才能がないクリスチャンに代わって、自身の想いを文字に込めて、ロクサーヌへのラブレターを書くことに・・・。果たして、三人が求める純真な愛の行方は――。
『シラノ』レビュー
何度も映像化や舞台化され続ける名作戯曲「シラノ・ド・ベルジュラック」をエリカ・シュミットが2018年に新解釈によって手掛けた舞台「シラノ」を映画化したミュージカル作品。
引用された作品も数知れず、ポリスの楽曲「ロクサーヌ」もここから付けられたタイトルである。
現代的に多様性を意識した大胆なアレンジを加えられているものの、プロットとしては、原作に寄り添っているし、展開や結末も同じであるが、クラシックともポップとも違った絶妙な楽曲を多く使用したことで、観たことあるはずなのに、観たことのない独特の世界観を構築することに成功している。それをさらに映画化したことで、表現の幅が格段に広がっていて、見ごたえ十分といったところ。
ロクサーヌは、「愛している」という言葉に不信感を覚えている。それは、今まで近づいてきた家柄目当ての男たちの決まり文句でもあったからだ。ロクサーヌは表面上の愛情表現よりも、より言葉に込められた想いを感じたかったのだ。
だからこそシラノの書く、詩的な手紙にロクサーヌは恋をする。しかし、姿を想像している相手はシラノではなく、彼の部隊に配属された若い兵士クリスチャン。ロクサーヌに秘めた愛を抱きながら、ロクサーヌの幸せを想うがあまり、自分の想いは殺しつつ、クリスチャンと偽り手紙を書き続けるシラノの姿は切ない。
クリスチャンもロクサーヌを愛している気持ちに嘘はないのだが、シラノとの間に友情も芽生え、その中で手紙に込められているのがシラノ自身の気持ちであることに気づいていく。
エリカ・シュミットは、今作の脚本と製作総指揮としても参加しているが、主演のピーター・ディンクレイジとヘイリー・ベネットは、舞台版からの起用である。しかも監督はヘイリー・ベネットのパートナーである映画監督のジョー・ライトともあって、ヘイリーの魅力をここぞとばかりに引き出している。
映画版で初めての参加になるのは、クリスチャン役のケルヴィン・ハンソン・ジュニアだが、主演3人の息がぴったりで、歌声にもそれぞれ特徴を持っている。それぞれの想いが歌となって交差する美しい愛の物語だ。
点数 88



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