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新作映画批評:『富士山と、コーヒーと、しあわせの数式』(10月24日公開)

新作映画批評:『富士山と、コーヒーと、しあわせの数式』(10月24日公開)

作品情報

【ストーリー】

祖母・文子と暮らし始めた大学生の拓磨は、亡き祖父・偉志の書斎で大学の入学案内を見つける。それは偉志が遺した文子へのサプライズだった。一歩踏み出し、若い頃の夢だった「学び」の日々を謳歌する文子。一方、拓磨は夢に自信が持てず将来に悩む。そんな二人は、富士山が好きだった偉志の手帳に不思議な数式を見つけて・・・。

【クレジット】

主演:豆原一成(JO1) (『劇場版 仮面ライダーリバイス バトルファミリア』(22)、『BADBOYS -THE MOVIE-』(25)等) 市毛良枝 (『ラーゲリより愛を込めて』(22)、『明日を綴る写真館』(24)等) 出演:酒井美紀、八木莉可子、市川笑三郎、福田歩汰(DXTEEN)、藤田玲、星田英利/長塚京三

監督:中西健二

主題歌:「ひらく」 JO1 (LAPONE ENTERTAINMENT) 

脚本:まなべゆきこ

音楽:安川午朗 

制作プロダクション:PADMA

原案:島田依史子 「信用はデパートで売っていない 教え子とともに歩んだ女性の物語」(講談社エディトリアル刊) 

原案総責任:島田昌和

配給:ギャガ 

©2025「富士山と、コーヒーと、しあわせの数式」

公式HP:https://gaga.ne.jp/fujisan_and_coffee

10/24(金)全国ロードショー!

身内の死によって、離れ離れになっていた家族が再生していく物語は、全世界共通と言っていいほど、どこの国でも定期的に制作されているが、それは、亡くなった者の最後の大仕事、役割といえるのかもしれない。

今作では、祖父の死と母親の海外出張によって、疎遠になっていた祖母の家にしばらく住むことになった青年と、その祖母を中心に、周りを巻き込みながら、素朴で前向きな物語が描かれている。

結婚50周年で何やらサプライズを計画していたなかで亡くなってしまった祖父の足跡を辿りながら、その想いの真相を探求していく。シンプルに考えると悲しい物語に思えるかもしれないが、今作は”死”に対して、ネガティブな要素をあえて描かないようにしている。つまり遺された者たちに託された想いという側面に徹しているのだ。

祖母、母、息子、それぞれの世代の描き方は、非常にバランスが良く、重圧になり過ぎないスマートなものになっているが、全体的に起業理念や「女性の独立とは~」みたいな思想が入った作品だと感じた理由は明確にあったし、そういった部分に関してはディテールが丁寧に描かれていた。

それはどうしてかというと、原案としているのが、作中にも登場する島田依史子の自伝「信用はデパートで売っていない 教え子とともに歩んだ女性の物語」(講談社エディトリアル刊)だからだ。 それを脚本家まなべゆきこが現代的視点を加え、ドラマ映画として再構築している。

好きを突き詰めることの難しさと同時に、決して不可能ではなく、実現可能な前向きな側面も描かれており、地味ルックな作品ではあるものの、将来に悩む多くの人に観てもらいたい作品だ。

総合評価:82点

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