作品情報
2017年ロングランヒットした『世界でいちばん美しい村』でネパール大震災後懸命に生きる人々を捉えた写真家であり映画監督の石川梵は1991年からこの村を取材、過去の貴重な記録とともに2017年から2019年までの3年間に撮影された映像が本作として結実した。“生きること”の本質に触れるドキュメンタリー映画が、この夏スクリーンにいよいよ登場する。
『くじらびと』レビュー

今までも写真集や書籍などで、インドネシアにある沖縄よりやや大きい島レンバタ島にある、人口1500人ほどの小さなラマレラ村での鯨漁に密着してきた写真家・ノンフィクション作家の石川梵。
1991年からラマレラ村での取材は続けられていて、書籍に加えフジテレビ系列の「巨鯨に挑む」やTBSの「クレイジージャーニー」などでも、その様子というのを映像として届けてきた。
今作の中で映し出されるのは2017~19年の約3年間ではあるが、村人との信頼関係は30年間という歴史があってこそでもあることから、そこを含めると実に30年かけて制作された1本のドキュメンタリー映画。
ラマレラ村は、鯨漁で生活が支えられている村である。単純に食料としても使用されるが、鯨の肉を貨幣代わりにして、他の食材や果物や野菜、生活用品と交換することもあって、鯨がなくてはならないのだ。
年間10頭ほどの鯨が獲れるとされているが、4ヶ月に1頭も獲れない場合もある。海に船を出して、ひたすら待つという忍耐が必要なラマレラ村のかなり原始的な鯨漁で、村に住んでいるわけではない監督にとって、取材に行くタイミングも難しい。
今作の撮影が開始されてから、実際に鯨漁の姿を捉えることができたのは、2019年ということもあって、監督やスタッフもタイミングと忍耐が試されていて、そこは村の人々との意識ともリンクする部分があるのだ。
手作りの船と銛一本で巨大なマッコウクジラに立ち向かう様子は、正に命がけのリアル・モンスターハンターであり、そこには観たこともないダイナミックでリアルな映像が広がっている。
鯨が獲れない場合はマンタやジンベイザメが獲れる場合もあるが、またそちらも命がけであったりして、実際にベンジャミンという人物が取材中に亡くなってしまっている。
それは不幸な出来事ではあったが、それも「生きる」ためのリスクでもあり、表面上の漁のシーンだけではなく、その村に伝わる風習や儀式、ジンクスといったもの、キリスト教による宗教的な概念も入り混じる村の姿を映し出すきっかけともなった。
広大な海の中に現れる鯨の姿は美しい映像でもあったりするが、漁が始まると、そんな青かった海が、鯨の血で真っ赤に染まっていく。これを残酷と思う人もいるかもしれない、動物愛護団体が観ていたら苦情を言ってくるかもしれない…
美しくもあり、衝撃的でもあるという真逆のような映像のギャップによって、人間が「生きる」ということを映し出しているようだ。
数多くの貴重な映像を観られるだけでも価値はあるが、改めて「生きる」ことについて考えさせられるメッセージ性も兼ね備えた作品となっている。

点数 85
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