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この映画語らせて!ズバッと評論!!『マクベス』徹底的に舞台感を演出しながら映画にしかできない画を作り上げた!!

作品情報

アカデミー賞受賞歴のあるジョエル・コーエン監督が、デンゼル・ワシントンとフランシス・マクドーマンドを主演に迎えシェイクスピアの戯曲を映画化。『マクベス』は1月14日にApple TV+で配信開始。

『マクベス』レビュー

散々、映画化やドラマ化、もちろん舞台化も休みない程に、世界中どこかでは観ることのできるし、直接的ではなくても、下敷きとしていたり、下敷きとした作品がさらに下敷きにされていたり……といった、無限ループの原点に位置する作家ウィリアム・シェイクスピアの代表作「マクベス」

『ウエスト・サイド・ストーリー』も「ロミオとジュリエット」が下敷きではあるし、『ハウス・オブ・グッチ』も「マクベス」や他のシェイクスピア劇を感じさせる構成となっている。

現代的解釈というよりは、権力に取り付かれた妻、そして権力も手にしたいが、罪の意識や罪悪感、報復を日々恐れる心などが、淡々と描かれていくといった「マクベス」の本質的な部分を、かなり忠実に描いている。

最近のデンゼル・ワシントンは、「舞台」というものに取り付かれている。自ら監督した『フェンス』や、当初は監督する予定だった『マ・レイニーのブラックボトム』も含めて、会話劇に拘っているといえるだろう。

今作の魅力のひとつも、やはり会話劇という点であって、会話のひとつひとつ、セリフが物語を紡いでいくように詩的である。

セットもあえて、細かいものをそぎ落として、シンプルそのもの。煙や光を巧みに使い、まさに「舞台感」というものを演出しているのだが、舞台ではできない遠近を巧みに使った、奥行きを感じさせる俯瞰から見た画はアートそのもの。

特にモノクロの世界中で、影によって、キャラクターの心情を演出する技量は流石だといえる。そういった点からも、影を美しく感じられる作品である。クラシカルな印象を与えたいがための単純な発想ではなく、完全に影というアイテムをフル活用している点には感動すらおぼえるほどだ。

「夏の夜の夢」「カフカの猿」など、日本公演にも積極的に出演していたキャサリン・ハンターが演じる魔女の異質感にも注目してもらいたい。滲み出るような怪しさ、そしてキャサリンの特徴というべき、体の柔らかさがあるからこそできる独特すぎる奇妙な動き。VFXによって魔女を表現するのではなく、体ひとつで魔女という存在を表現できる役者をキャスティングしているのだろう。

点数 82

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