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この映画語らせて!ズバッと評論!!『過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家 森山大道』今作は森山大道の魅力と同時に本を作ることの魅力も映し出している!!

この映画語らせて!ズバッと評論!!『過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家 森山大道』今作は森山大道の魅力と同時に本を作ることの魅力も映し出している!!

作品情報

2019年に写真界のノーベル賞とも言われる「ハッセルブラッド国際写真賞」を受賞するなど、世界でもっとも人気のある日本人写真家として知られる森山大道を追ったドキュメンタリー。デビューから50年以上、80歳を超えてもなお現役の写真家として活躍する森山大道。国内のみならず海外でも高い評価を集め、若い世代からも絶大な支持を誇る森山だが、その撮影手法やプライベートの顔などはこれまで謎に包まれていた。そんな森山の写真の魅力に迫るため、1968年に出版された森山のデビュー写真集「にっぽん劇場写真帖」復刊プロジェクトにカメラが密着。ファインダーをのぞく森山の姿や、編集者たちとやりとりする姿から、伝説の写真集を復活させるプロジェクトの舞台裏と、森山のスナップワークの秘密に迫っていく。

『過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家 森山大道』レビュー

写真家・森山大道という人物を名前ぐらいしか聞いたことがなく、ほとんど知らない状態で観たのだが…結論から言うと、今作を観てよかったと思う。

森山大道という人物の人柄だったり、魅力的なものも見えてくるのは大前提として、写真とは何なのか?芸術として写真が評価される点は何なのか?ということを写真に関しては無知な私にも伝わってきたのだ。

つまり写真というのは、様々な定義があるとしても、今作を観て感じたのは、カメラマンが「何」を被写体として捉えるか、何にアート性を感じるのか、といった思考回路自体が写真をアートにさせているのだということだ

それを選んだカメラマンが完成形の写真に意味を持たせるのであって、写真自体よりも写真から透けて見えるカメラマンの顔だということを感じさせられた。

なぜこれを被写体に選んだのだろうか…と考えて写真を見ることが楽しくなってくる。

今作のもうひとつの側面として、本を作ることの楽しさだったり、意義というものも映し出されている。

森山大道の処女作であり、かなり前に絶版本となっている「にっぽん劇場写真帖」を現代に蘇らせようとして、森山大道だけではなく、周りのスタッフたちが試行錯誤してプロジェクトを進めていく過程が映し出されていて、紙の質や写真の配置に拘ったりする姿は、正に職人であるし、こういう人たちがいる限りは、紙本の文化は無くならないだろうという希望がもてる。

デジタル化が進み、電子書籍で読む人が多くなる中で、出版業界は苦戦しているとは言っても、こういった紙本であることの意義、本に価値を見出すという点で感じるものが多い作品でもあっただけに、『ブックセラーズ』同様に本を愛する人にも観てもらいたい作品である。

編集も良い意味で軽くて非常に観やすい。知らない人のドキュメンタリーだからといってスルーしてしまうには、勿体ない作品だ。

点数 80

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