作品情報
福島県・南相馬にある映画館「朝日座」に、茂木莉子と名乗る女性が現れる。経営が傾いた「朝日座」を立て直すために東京からやってきたというが、支配人・森田保造は突然のできごとに驚きを隠せない。すでに閉館が決まり打つ手がないと諦めていた森田だが、見ず知らずの莉子の熱意に少しずつ心を動かされていく。かくして、「朝日座」存続のために奮闘する日々が始まった――。
脚本・監督はタナダユキ。2004 年、フォークシンガーの高田渡を追ったドキュメンタリー映画『タカダワタル的』が東京国際映画祭に特別招待作品として上映され、さらに同年、劇映画『月とチェリー』が英国映画協会の「21 世紀の称賛に値する日本映画 10 本」に選出され、大きな話題となった。2008 年脚本・監督を務めた『百万円と苦虫女』で日本映画監督協会新人賞を受賞。その後も映画『俺たちに明日はないッス』(08)、『ふがいない僕は空を見た』(12)、『四十九日のレシピ』(13)、『ロマンス』(15)、『お父さんと伊藤さん』(16)、『ロマンスドール』(20)を発表。テレビドラマや配信ドラマでも数多くの作品を世に送り出し、CM やミュージックビデオなどの演出も手掛けている。
先取り版とは?
私、映画評論家バフィーがマスコミ試写で、いち早く観て評論する先取り版です。通常回では、公開日もしくは前後に更新していますが、毎週10本以上の新作を観ていて、量が多く大渋滞状態ということもあって、先取りもしていきます。
ダメな作品はダメと言いますが、基本的にネタバレを垂れ流して、映画自体を観なくてもいいような評論はしません。
『浜の朝日の嘘つきどもと』レビュー

『岬のマヨイガ』『護られなかった者たちへ』などに続き、こちらも東日本大震災後の人々の姿が描かれていた。
これは偶然ということもあるが、実は時期的なものもあって、災害や事件を題材として描く、特に『遺体 明日への十日間』のように、その題材に直接的に描いたものではなく、それによって人生が変動し、そこから再生していった過程を描き、尚且つ「今」を語るとなると、製作年数も入れて、どうしても約8~10年というスパンが必要になってくることも要因として大きい。
だからこそ10年経った今、東日本大震災を扱った作品が連続しているのだろう。特に今作に関しては、そんな震災を経験した人々が、次は新型コロナに直面してとしまうところ、つまり現在進行形の物語が描かれているのだ。
同じ「映画」というものを題材を扱った作品としては、『キネマの神様』も現在公開中だ。『キネマの神様』の場合は、映画制作に関わっている人々という点では、等身大の人々の姿が映し出されたていて、その中で山田組ならではの安定感があった作品といえるだろうが、残念だったのは、新型コロナの影響という点で物語に反映させている割には、そこから「映画の持つ力」という点で、あまり機能しておらず、取って付けたような感じがしてならなかったことだ。
しかし、今作は逆に、そこがピンポイントで描かれていたのだ。
今作の舞台となっている映画館「朝日座」は、 福島県南相馬市に実在している名画座だ。ドキュメンタリー『朝日座 ひはまたのぼる~南相馬・朝日座と観客達のものがたり~ 』『ASAHIZA 人間は、どこへ行く 』などのドキュメンタリーが制作されたり、「朝日座を楽しむ会」として、不定期に映画の上映イベトなども行われているなど、福島復興の象徴のひとつとしてや、文化遺産としての側面からも注目が集まっている。
そんな震災を乗り越えた「朝日座」が次に直面する、復興を妨げるような、新型コロナに耐え抜けるのか、という入り口から、「映画の持つ力」というものを挫けそうになりながらも、登場人物たちが探求していく物語となっている。
劇中の中で、「映画を観てもお腹は膨れないけど」というセリフがあるが、それによって救われる人もいるし、希望を見出せる人もいる。誰しもがそうとは限らず、映画を観たからといって救えないものもあるけど、そんな映画が暗い世の中だから必要。
映画というものは、戦争や不況などの辛い現実から逃れる現実逃避として扱われてきた側面も実際にあるが、時には現実逃避も必要であって、そこから新しい道を見出していくのも、また映画の役割が大きかったりする。
もちろん、人によってそれが映画とは限らず、音楽だったりアートだったり…と違うわけだが、それを絶えさせない人々の姿にも希望が見出せたりするわけだ。
小さい劇場や名画座は、時代の流れやシネコンなどによって、経営を圧迫されてきた上に、災害や今回の新型コロナのような事態では、生き残れない現状がある。これは映画館だけに限らず、小売りや飲食店も同様のことであって、そこに関しては、共通したテーマがある。
映画は娯楽だから、なくたって死にはしないという考えもあるかもしれない。『サマーフィルムにのって』でも、そういった問題が扱われていたし、劇中でも「今の人は映画なんて観ないでYouTubeを観てますよ」というセリフもあった。
果たして本当にそうだろうか…飢えて死ぬということはないにしても、映画によって、救える命が少しでもあるという意味では、ないと死んでしまう人もいるのだ。映画だけならシネコンでもいいかもしれない、だけどその映画館それぞれのもつ個性や雰囲気が人を救ってくれる部分もある。
「大変なときに映画なんか観てるんじゃない!」じゃなくて、大変だからこそ、映画を観てもらいたいと私は思う。
CREDIT

出演:高畑充希
柳家喬太郎 大久保佳代子
甲本雅裕 佐野弘樹 神尾 佑 竹原ピストル
光石 研/吉行和子
脚本・監督:タナダユキ
配給:ポニーキャニオン
©2021 映画『浜の朝日の噓つきどもと』製作委員会
・公式サイト:https://hamano-asahi.jp/
・公式SNS:@hamano_asahi
9月10日(金)全国ロードショー/8月27日(金)福島県先行公開

点数 85
- メディア寄稿:2025年ベスト&トホホ、『ANIMAL』評(映画秘宝)
- メディア寄稿:ニュースコラム1月5~9日『悪魔のいけにえ』『キルケーの魔女』『アメリと雨の物語』など(NiEW)
- 新作映画短評:『ロストランズ 闇を狩る者』(1月1日公開)
- 新作映画短評:『ヴィレッジ 声帯切村』(1月2日公開)
- メディア寄稿:ニュースコラム12月22~26日『スーパーガール』『嵐が丘』『ポンヌフの恋人』など(NiEW)



コメントを書く