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この映画語らせて!ズバッと評論!!『キネマの神様』山田組の安定感はあるものの、映画に対する想いをもう少し詰め込んでほしかった!!

この映画語らせて!ズバッと評論!!『キネマの神様』山田組の安定感はあるものの、映画に対する想いをもう少し詰め込んでほしかった!!

作品情報

ギャンブル漬けで借金まみれのゴウ(沢田研二)は妻の淑子(宮本信子)と娘の歩(寺島しのぶ)にも見放されたダメ親父。
そんな彼にも、たった一つだけ愛してやまないものがあった。それは「映画」———。行きつけの名画座の館主・テラシン(小林稔侍)とゴウは、かつて撮影所で働く仲間だった。若き日のゴウ(菅田将暉)は助監督として、映写技師のテラシン(野田洋次郎)をはじめ、時代を代表する名監督やスター女優の園子(北川景子)、また撮影所近くの食堂の娘・淑子(永野芽郁)に囲まれながら夢を追い求め、青春を駆け抜けていた。しかしゴウは初監督作品「キネマの神様」の撮影初日に転落事故で大怪我をし、その作品は幻となってしまう。
あれから約50年。あの日の「キネマの神様」の脚本が出てきたことで、ゴウの中で止まっていた夢が再び動き始める。これは、”映画の神様”を信じ続けた男の人生とともに紡がれる愛と友情、そして家族の物語。

『キネマの神様』レビュー

松竹映画100周年記念作品ということもあって、松竹の撮影所など、懐かしい風景が蘇ることは、映画ファンにとっては嬉しい限りではあるが、せっかく映画ヲネタとして扱った作品なのだから、松竹映画ネタはもっと散りばめてほしかったところで、撮影やバックステージの内輪的なノリの多いように感じられる。

山田洋次といえば「男はつらいよ」シリーズが代表作ではあるが、近年の作品としては、「家族はつらいよ」シリーズを通して、等身大で王道な「家族」を描き続けてきた。そういった点で安心のブランドが確立していて、今作においてもそれは存分に機能していている。

今作の登場人物たちも映画業界にいながら夢破れて、普通の職についた者たちが多いことから、今回も等身大の物語であるのだ。

いろんなものが入り組んだ映画が溢れている中で箸休めとして観るには丁度良い作品であることは間違いないが、それを前提として言わせてもらいたいことがいくつかある。

劇中で「7を観せて、観客に10を感じさせる」みたいなセリフが出てきて、この映画もメタ的にそうなっているのだが、どうも言い訳に聞こえてしまう。というのもキャラクター描写がひとりひとり薄いのだ。

主人公ゴウの若い頃を菅田将暉が演じているからこそ、少しは深みが出てはいるものの、キャラクター構造としては、なかなか薄い。ギャンブル好きという点は、昔から変わってないという設定だが、若い頃のシーンでギャンブルをやっていたり、不良なイメージが全くなく、逆に映画作りに神経をつぎ込む好青年のようにしか見えない。

かと言って、貧困生活に圧迫されている様子もなかった。だからこそ、せっかく足を突っ込むことができた夢の入口をあっさり諦めてしまうのが、かなり不自然で、無理やり現代パートに繋げようとしているようでならない。

志村けんが亡くなってしまったことで、今作に対してあまり言えない風潮であるのが、メディアなどを通してもなんとなく伝わってくるのだが、あえて言わせてもらえば、沢田研二の演技は酷い。かと言って志村けんなら良かったのかと言われても比較できないだけに、正直わからない。

若い頃のパートに演技派俳優が集中してしまったせいか、現代パートの演技の質が落ちいているような感じもしてしまい、過去と現代のバランスが非常に悪く、現代の方が昭和喜劇臭がしているのは何故だ…

ゴウの孫勇太を演じている、前田旺志郎も自閉症の演技にしては誇張しすぎていて、設定なのか単に下手なのかが判別できないし、キャラクター設定を見ても「コミュニケーションが得意でない」としか書いていない。

志村けんのことも含めて、新型コロナの影響を大きく受けた作品であり、劇中でもコロナ禍の今が反映されているのだが、そのシーンが取って付けたようにしかなっていない。そこから「映画のもつ力」「映画が希望を見せてくれる」というように繋げていくのであれば理解できるのだが、ただ単に付けただけでは意味がない。

映画を題材にしていながら、全体的に「映画愛」が不足しているような感じがしてしまった。

そんな中でも、今作の注目点は北川景子の演技だ。今作で北川景子が演じてるのは、往年の名女優であるが、昭和映画にあった独特のセリフ回しを見事に自分のものにしていて、現代劇では壁を感じてしまう独特の間が丁度よく合っている。

近年でいえば『ファースト・ラヴ』も同様に北川景子は、少し壁があるというか、心を開きそうで開き切っていない、絶妙なキャラクターを演じるにはうってつけの女優だということが、今作で立証されたようにも思えるだけに、今作は菅田将暉含め、若手俳優陣で辛うじてバランスが保たれている作品だ。

とはいえ…私は今作を試写で2回観ている….

クレジット

【作品概要】
■タイトル: 『キネマの神様』
■監 督: 山田洋次
■脚 本: 山田洋次 朝原雄三
■原 作: 原田マハ「キネマの神様」(文春文庫刊)
■出 演: 沢田研二 菅田将暉 永野芽郁 野田洋次郎 / 北川景子 寺島しのぶ 小林稔侍 宮本信子
■主題歌 :「うたかた歌」RADWIMPS feat.菅田将暉(Muzinto Records/EMI)
■配 給: 松竹
■コピーライト: (C)2021「キネマの神様」製作委員会
■公式サイト: https://movies.shochiku.co.jp/kinema-kamisama/
■公式Twitter: https://twitter.com/kinema_kamisama
■公式Instagram: https://www.instagram.com/kinema_kamisama/

点数 75

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