作品情報
大学選びに悩むエルは、ノアとの遠距離恋愛に戸惑いながら、親友リーとの友情の変化やイケメン転校生に気もそぞろ…。なんだか、高校最後の年は波乱の予感! 監督はディズニー・チャンネル映画の「ティーン・ビーチ」シリーズの脚本を務めたヴィンス・マルセロが前作に続き監督を務める。出演は『ラモーナのおきて』『グレイテスト・サマー』のジョーイ・キング、『SUPER 8/スーパーエイト』『レプリケイト-襲撃-』のジョエル・コートニー、ジェイコブ・エロルディなど。
『キスから始まるものがたり2』レビュー
今作を単純なティーン向けラブコメだと思っている人がいたら、実は大間違い。
確かに監督のヴィンス・マルセロは『ティーン・ビーチ』の脚本家であり、ディズニー・チャンネル仕込みの王道的で型にはまった作品が得意であり、全体的な構造やパッケージは、今回も正にティーン向けラブコメ作品だ。
薄っぺらいプロットや寒気がするようなコメディパートの中でジョーイ・キングが可愛いとか、ジェイコブ・エロルディがカッコいいなんて風に、作品自体の要点を外しながら、妥協した観方をしてしまいがちだ。
しかし、この作品に隠れているのは、恋愛映画における、普遍的なテーマとも言うべき「男女の友情」は成立するのかという問題を内側と外側から描こうとしている作品なのだ。
ジョーイ・キング演じるエルとジョエル・コートニー演じるリーは親友同士であり、それぞれ恋人がいる。1作目で恋愛関係になるかならないかで揺らいだ結果、エルはリーの兄のノアを選び、ふたりは親友であり続けることを選択した。
今作では、すっかり恋愛感情ではない、友情をストレートに描いており、エルはリーが彼女と出かける際にもついてきたり、2人きりにさせてくれないという、かなり邪魔な存在だが、当人のエルがそれを感じていない。
単純に空気が読めないのかと思うかもしれないが、親友というストレートな感情から、もはや男女だから変な気使うという緊張感も超越してしまっているのだ。
映画の中でもリーに心が揺らぐというシーンも一切ないが、愛称がとても良いということがわかるシーンが連続して、この2人が結ばれないせいで周りが不幸になっているように感じさせられてしまうのだが、そう思ってしまう理由というのが「男女の友情」がないという私たちの固定概念からなのだ。
ノアもその概念から、エルに誤解させないように、ついた嘘がきっかけで、浮気問題に発展してしまったりもする。エルもリーと散々、じゃれあっているのにも関わらず、ノアに女性の影がちらつくと、「男女の友情」は存在していると思っている自分の中で矛盾となるような感情が芽生えていることにも気づく。
エルも心が乱れて他の男性が気になってしまうが、それはリーではなく、新キャラクターのマルコであることで、リーはあくまで親友で恋愛相手ではないと迷う余地もない。徹底して「男女の友情」 を様々な角度から追及しているのだ。
ただ…怖いのが、実は3作目が同時に撮影されていて、2021年に配信されることが決定していることだ。
リーと最終的に結ばれてしまうとしたら、今回の評価は撤回するしかなくなってしまう。
そんなどこにでもありそうな物語を作らないとは言い切れない監督の作品なだけに不安はあるが、この作品がシリーズを通して、究極の「男女の友情」を描いた名作なのか、ただ変に長い物語を間延びさせるためだけに、あやふやに誤魔化していただけのどこにでもあるベタベタなラブコメなのかは、3作目次第ということだ。
点数 80点
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