作品情報
『名もなき生涯』『ツリー・オブ・ライフ』などを手がけてきた名匠テレンス・マリックが、『タナー・ホール 胸騒ぎの誘惑』『エルム街の悪夢』のルーニー・マーラ、『ファースト・マン』『ラ・ラ・ランド』のライアン・ゴズリング、『光をくれた人』『X-MEN:ダーク・フェニックス』のマイケル・ファスベンダー、『ポップスター』『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』のナタリー・ポートマンという豪華実力派俳優を迎え、4人の男女が幸せを模索する姿を描いた人間ドラマ。音楽の街、オースティン。フリーターのフェイは大物プロデューサーのクックと密かに付き合い、売れないソングライターのBVは、そんなフェイに思いを寄せていた。その一方で、恋愛をゲームのように楽しむクックは夢を諦めたウェイトレスのロンダを誘惑する。さまざまな思いが交錯する中、4人に思いもよらない運命が待ち受けていた。フェイ役をマーラ、BV役をゴズリング、クック役をファスベンダー、ロンダ役をポートマンがそれぞれ演じるほか、リッキー・リー、イギー・ポップ、パティ・スミス、レッド・ホット・チリ・ペッパーズなどミュージシャンたちも出演。撮影は『ゼロ・グラビティ』『レヴェナント 蘇えりし者』などで3度のアカデミー賞を受賞したエマニュエル・ルベツキ。
『ソング・トゥ・ソング』レビュー

未公開となっていた2017年の映画が日本上陸。日本では『名もなき生涯』の方が先に公開されてしまったテレンス・マリック作品。
イギー・ポップやレッド・ホット・チリ・ペッパーズなど実際のアーティストが本人役で登場することで、ドキュメンタリーのようなシーンも多く、夢の世界と思われている音楽業界で働く者たちのリアルライフを見せられているような感覚にさせられる。
ただ、ただ淡々と物語が進んでいくだけで、ストーリーは、なかなか薄っぺらいが、映像体験というかたちでも楽しめる。
ただ…2時間超えというのは難点。なかなか耐え難いものがある。ショップのディスプレイとして観るならいいかもしれないが、椅子に座って直視させられるのは耐え難いものがある。
ソング・トゥ・ソングといっているだけに、音楽にのせて物語が進んでいくわけではあるが、選曲が上手く機能していないように思える。ミュージックビデオというよりは、ブランドものや化粧品のCMプロモーション映像を長々と観ているような感覚にしかならない。
なんだか、スタイリッシュだったり、おしゃれな映像で構成されていることが、一周回って、そうしておけばアート映画として評価されるだろうという思惑が渦巻いているように感じられてしまう。
どう観ても、俳優たちが何となくフラフラしているだけにしか思えない。

今作がそうとは限らないが、アート映画というのは、実は才能がない人が作ることが多かったりもするという事実がある。絵でもそうだが、抽象画というのは、人によって、勝手な肉付けをしてしまうため、実は正当な評価はできない、存在しない。
それ風に見せておけば、観た人が勝手に自分の中の構想と物語があたかも一致したかのように想像し、「私はこの世界観を理解できる」という勘違いの余韻から、勝手な物語を作りあげてしまうものが、いわゆる「アート系」でもあり、ある意味、なかなか便利なジャンルだ。
例えば、映像の中に、何の関係もない木が何度も映し出されたとすると、制作している側は何も考えていなかったとしても、観ている人が勝手に「あれはメタファー」だとか言い出したりする。
テレンス・マリックは、映像や音楽を散りばめて、ひとつにすることで、それをアート映画と感じさせるが、この監督自体があまり表舞台に出てこないため、聞かれても実際のところ自分自身がわかっていない可能性だってある。
ただ、テレンス・マリックはペテン師ではなく、アーティストだと多くの人に感じさせる。アートだと言い張ったとしても、それなりの説得力、「騙す力」があるということは間違いなく才能のひとつであるのだ。
かなり特殊な監督のひとりではあるが、今作の内容をどうこう語ることは、答えの出ない渦に引き込まれるような気がしてならない。

点数 70
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