作品情報
BBCのドキュメンタリーにインスパイアされて誕生し、ローレンス・オリヴィエ賞にノミネートされた大ヒットミュージカル「Everybody’s Talking About Jamie」が映画化! 16歳の高校生ジェイミーが自分自身の存在を主張するために「ドラァグクイーン」になっていく様子が描かれていく。 ジェイミー役を演じるのは、約5000人のオーディションから選ばれたマックス・ハーウッド。
『Everybody’s Talking About Jamie ~ジェイミー~』レビュー

BBCのドキュメンタリー「Jamie: Drag Queen at 16」 にインスパイアされて2017年に舞台化された『Everybody’s Talking About Jamie』は大人気となり、2018年には 『ハミルトン』『パリのアメリカ人』などと並んでローレンス・オリヴィエ賞5部門にノミネートされた。
日本でも8月にWATWING(ワトウィン)の高橋颯 と森崎ウィンらによって舞台版が上演されていたこともあって、存在を知っている人は多いはず。
オリジナル舞台版の演出、ライブ映画版(日本未公開)の監督も手掛けたジョナサン・バターレルが映画版の監督も務める。先日配信が開始された『シンデレラ』同様に、当初は劇場公開作品として製作されたものだが、Aamzonプライム・ビデオでの配信スルーとなった。
未公開作品となってしまったことは残念だが、日本でもアメリカと同日の9月17日に配信が開始されたのは、とりあえず喜ばしいことだ。
ドラァグクイーンを扱ったミュージカル作品は 『キンキーブーツ』『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』といったものがあるが、どれもアンダーグラウンド的な部分を描いたものが多かった。
その点で言えば「ドラァグクイーン」という存在ではなく、選択肢のひとつとして描いていたジャッキー・ウィーヴァー主演の『ステージマザー』で描いていたこととリンクするような作品でもある。
多様性といわれる現代においても、主張を抑えることが必要とされていて、それを表に出すとたちまち周りは困惑を示す。まだ社会構造自体が適応できていないのもあるし、大人自身も激しく移り変わる新しい概念に付いていけないのかもしれない。
そんな複雑な世界で生きていくことは、それが自分の子供であった場合、どこまで理解を示せるのかという問題にも直面してくる。
ジェイミーの両親は離婚していて、母と一緒に暮らしている。母はジェイミーのことを理解し、心から愛している。親が子供を愛していて、LGBTや多様性にもリベラルな考えの持ち主であったとしても、自分の子供の場合となった場合、たちまち矛盾的な考えが生じてしまう。
それは、どこかで自分の子供はそうではないと思っているからだ。その象徴的な存在がジェイミーの父である。ジェイミーの父は決して悪い存在ではない。ただ、自分の息子像とは違っていたことが受け入れられなかっただけ。
親の望むスポーツを始めなかったり、親の望む進路に進まなかったり…といった親の願望と子供の決断に、すれ違いが生じるのは、映画でも現実社会でも変わりはないが、更にジェンダー的な問題も加わってくるとなれば、感情が忙しいのも理解できなくない。
カミングアウトする側の勇気と並行して、受け入れる側の勇気も今後の世界においては必要になってくるのだと、改めて感じさせられる作品であるし、今作のジェイミーの母はジェイミーの選択、ジェイミーの考え、ジェイミーの行動…すべてを単純に自分の子供として愛している。
それは当然のことでありながらも、誰もができることではないが、世界中のみんなが「もし自分の子供であったら…」と思えば、もっと世界は平和になるということを提示しているようでもあった。
こういったミュージカルは劇場でエンターテイメントとして楽しむことで、潜在的に印象付ける側面があるだけに、劇場公開されなかったのは残念でならない。

点数 80
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