作品情報
『スリー・ビルボード』のオスカー女優フランシス・マクドーマンドが主演を務め、アメリカ西部の路上に暮らす車上生活者たちの生き様を、大自然の映像美とともに描いたロードムービー。ジェシカ・ブルーダーのノンフィクション「ノマド 漂流する高齢労働者たち」を原作に、『ザ・ライダー』で高く評価された新鋭クロエ・ジャオ監督がメガホンをとった。ネバダ州の企業城下町で暮らす60代の女性ファーンは、リーマンショックによる企業倒産の影響で、長年住み慣れた家を失ってしまう。キャンピングカーに全てを詰め込んだ彼女は、“現代のノマド(遊牧民)”として、過酷な季節労働の現場を渡り歩きながら車上生活を送ることに。毎日を懸命に乗り越えながら、行く先々で出会うノマドたちと心の交流を重ね、誇りを持って自由を生きる彼女の旅は続いていく。第93回アカデミー賞で作品、監督、主演女優など6部門でノミネートされた。
『ノマドランド』レビュー

アカデミー賞が迫る中、公開されていくノミネート作品ではあるが、映画館に行っても観客0人…実際に受賞したら少しは変わるのかもしれないが、アカデミー賞ブランドというのが、年々弱くなっている感じがしてならない。
企業の存在によって、工業・産業が活性化し、町自体が企業の存在によって成り立っている地域というのは、日本にもあるが、アメリカではリーマンショック後、そういった町が機能を失い空洞化していったのがラストベルト地帯。
更に新型コロナウイルスの影響によって、更に深刻化していくことは間違いない…
近年でもドキュメンタリー映画『行き止まりの世界に生まれて』がラストベルト地帯の現状を訴えかけていた。オバマ政権に失望していた中、何かを変えてくれるのではないかという期待からラストベルト地帯が多い州の表が2016年のアメリカ大統領選挙ではトランプに回ったともいわれていたが、2020年には、その期待は失望へと変わり、バイデン側に動いともいわれている。
今作を観て驚いた部分が、そういった経済的、社会的な問題自体にメスを入れていくというアプローチの作品ではなく、現実を受け入れて今を生きるというものだったのだ。
社会がどうだ、経済がどうだというワードがあまり出てこない。日々、どうやって生活するかということに必死な高齢者の姿を描いているのだ。
それを利用する企業として実名登場する「Amazon」
ホリデー・シーズンはフル稼働のAmazonは、その時期だけ季節労働者を大量に雇用する。しかし、長時間労働はあたりまえ、とにかく倉庫内を歩き続けないといけない。それは危険な職場としてランキング入りするほど。シーズンが終わると放り出される。
今作の主人公ファーンは、あくまで工業地帯であったのだが、Amazonによって、小売りやショッピングモールが経営できなくなり、職を失った者たちをあたかも救済のように雇用しているAmazonの奴隷サイクルにも別の問題点はあるものの、今作では、そんな負の部分はあまり描かれていないし、ノマドの人たちは、実際問題そんな意識を持っていないのだ。
これはこれで、問題点が大いにあると思うし、アメリカの広大な大地を背景に描いていることもあって、何だかロードムービー的な側面もあるが、実は日本のネットカフェ難民と変わらない。
ファーンのキャラクター構造として、ヒッピー世代でありながらも、結婚したことで家庭に定着したかたちで 長期間過ごしてきたという部分も大きく機能していて、そんなファーンが大きすぎるアメリカという国に放り出されたことは、不安もあるが概念に捕らわれない生き方ができるというヒッピー世代の本能をくすぐられているようでもあり、化石発掘場でのはしゃぎ様がそれを物語っている
実際のノマドの人たちが本人として出演していることで、ドキュメンタリー的側面も強い作品ではあるし、極端な社会風刺や極端なノマド賛美になっていないところが中間的視点を貫いている作品だといえるだろう。

点数 80
- 新作映画短評:『ロストランズ 闇を狩る者』(1月1日公開)
- 新作映画短評:『ヴィレッジ 声帯切村』(1月2日公開)
- メディア寄稿:ニュースコラム12月22~26日『スーパーガール』『嵐が丘』『ポンヌフの恋人』など(NiEW)
- メディア寄稿:『劇場版 緊急取調室 THE FINAL』評(エンタメネクスト)
- 衝撃のインド・バイオレンス・アクション『ANIMAL』が日本上陸! ポスタービジュアル&場面写真が解禁!


コメントを書く