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この映画語らせて!ズバッと評論!!『サイレント・トーキョー』あたかも社会風刺に見立てているが、犯人の動機がフワフワ!!

この映画語らせて!ズバッと評論!!『サイレント・トーキョー』あたかも社会風刺に見立てているが、犯人の動機がフワフワ!!

作品情報

「アンフェア」シリーズなど手がけた秦建日子がジョン・レノンとオノ・ヨーコの楽曲「Happy Xmas(War Is Over)」にインスパイアされて執筆した小説「サイレント・トーキョー And so this is Xmas」を映画化したクライムサスペンス。佐藤浩市、石田ゆり子、西島秀俊らの豪華キャスト陣を迎え、「SP」シリーズの波多野貴文監督がメガホンをとった。クリスマスイブの東京。恵比寿に爆弾を仕掛けたという一本の電話がテレビ局にかかって来た。半信半疑で中継に向かったテレビ局契約社員と、たまたま買い物に来ていた主婦は、騒動の中で爆破事件の犯人に仕立て上げられてしまう。そして、さらなる犯行予告が動画サイトにアップされる。犯人からの要求はテレビ生放送での首相との対談だった。要求を受け入れられない場合、18時に渋谷・ハチ公前付近で爆弾が爆発するというが……。

『サイレント・トーキョー』レビュー

今作、非常に物語構成能力が低い作品である。最後の最後まで、結局何を描こうとしているかが伝わってこないのだ。

劇中で中村倫也の「いったい何の話をしているんだ」というセリフがあるが、これこそが観ている側の気持ちを全て代弁してくれている。

中村倫也がわかりやすいミスリードキャラクターとして役割を果たすのと同時に、このキャラクターこそが、私たちの目線でもあったのだ。

全編にわたって問題提示されるのは「戦争」が周りにもたらす影響というものなのだが、軍事国家ではない日本にとっては、なんだか宙に浮いた話で、総理は戦争を容認するような発言をしているなど、戦争というワードに対してデリケートなはずの日本としては、少しSFに足を突っ込んでいるように思えてならない。

感覚的に日本の選挙というより、アメリカ選挙の感覚に近い気がする。政権や代表が変わって、自分の思いとは違った方針の場合、それを非難し、更にそんな代表を選んだ人々をも憎むという、右翼、左翼の過激派思想だ。

元も子もないことを言うと、幼い子が戦争の被害者であるという現状を知ったことで、それがトラウマとなっていたはずなのに、何故、その子を殺した爆弾そのものを作ろうとするのかが理解に苦しむ。

神の名のもとに大量虐殺をしたりする者たちは、自分の中で都合のいいように解釈し、偏った思想の中で勝手に構築された「神」を信じるわけだが、それは実は無意味そのものである。

何の関係もない人が死ぬという光景そのものがトラウマ、PTSD の要因であったはずなのに、自ら同じことをするという矛盾こそがテロリスト思想だとしたら、そうなのかもしれないが、人が死なないためであれば、関係ない人を殺しても良いという、トンデモ理論となってしまう。

トンデモ理論だったとしても、それを熱弁するほどの熱量はあるべきようなことをしているずなのに、その点でも犯人の動機がどうもフワフワしていて、個人的なもやもや感で行動しているようにしか思えず、「戦争」をただ盾にしているだけで、身勝手としか言いようがない。

渋谷で爆破予告がされているにも関わらず、若者たちや実際のYouTuber達が渋谷に話題作りとして集まってくる。そして実際に爆発してケガ人が続出して、死んだ人もいるかもしれないというカオスな状況になってはじめて、自分たちの愚かさに気づくというシーン。

こういうシーンを観ていると人間ってバカだなと思うし、更に言えば、バカの象徴として出演オファーされたYouTuber達も自分が出演している理由をわかっていないことを考えると救いようがない事態になっている。そのことこそが今作が一番描きたかった部分にも思えたのだが、間に薄っぺらく、フワフワした戦争論が作品のもつ意味をあえてわからなくしている様でならない。

東映が爆弾テロなんて大規模な題材をパニック映画に仕立て上げるなんて予算も技術力もないわけだから、渋谷のシーンがピークであり、結局は小さくてテレビドラマのような、大きなことは言っていても内々の話になるのは、仕方ないのかもしれないが、物語の構成やバランスというのは予算とは別問題なはずだ

点数 62

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