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第38回東京国際映画祭作品レビュー:15:『佐藤さんと佐藤さん』

第38回東京国際映画祭作品レビュー:15:『佐藤さんと佐藤さん』

作品情報

監督:天野千尋
脚本:熊谷まどか、天野千尋
出演:岸井ゆきの、宮沢氷魚、藤原さくら、三浦獠太、⽥村健太郎、前原滉、⼭本浩司、⼋⽊亜希⼦、中島歩、佐々⽊希、⽥島令⼦、ベンガル
配給:ポニーキャニオン

©2025「佐藤さんと佐藤さん」製作委員会

公開日:2025年11月28日(金)

【ストーリー】

佐藤サチ(22)は、ダンス好きの活発なアウトドア派。佐藤タモツ(23)は、正義感の強い真面目なインドア派 。正反対な性格だがなぜか気が合い、程なくして付き合い同棲を始める。そして5年後。弁護士を夢見るタモツは、司法試験を受けるが不合格が続く。しかし諦めずまた挑戦したいというタモツを応援するサチは、一人孤独に頑張るタモツを助けようと、一緒に勉強をはじめると、相変わらず不合格だったタモツとは反対に、サチが司法試験に受かってしまう・・・!! 申し訳ない気持ちのサチと、プライドがズタズタのタモツ。そんな中、サチの妊娠が発覚!ふたりは結婚することになるが・・・!?

男が外に出て、女が家を守るなんて保守的な考え方がずっとあった、というか今も一部では全然ある。ただ、そのなかで溜まるストレスや不安というのは、男女という性別の違いからくるものではない。

苗字が変わってしまうことが、相手を縛り、囲ってしまう行為になるのでは~という表面上のことや、それらよって生じるマインドの精神的負担が原因ではなく、ふたりの別の人間が、共存を試みると生じる日常バランスの変化を「同じ苗字だったらとしたらどうなのか~」というアプローチから描いている。

もちろん出産や生理不順などの身体的なものは、女性の方が圧倒的に負担を受けるのだが、日々のストレスや不安に対しては、男の場合であっても、逆の立場になれば、同じものが生じる。ただこれを立場逆転と言ってしまうのは危険すぎる。あたかも男や女がそうあるべきなのか~というマインドであるかのように誤解が生じるからだ。つまり非常に言葉にし辛いものを切り取った実験映画と言える側面もある。

司法試験に苦戦するタモツをはげますために、サチも司法試験に挑戦したら、自分の方が受かってしまった~という「東京大学物語」のような展開からはじまるわけだが、弁護士として働くサチと、浪人生でほぼ無職のタモツの間には、次第に溝が生じてくる。それはじわじわと。

始めは支え合えばいいと思ってスタートして、「愛があるから大丈夫だっ!」なんて思っているわけだが、それが長期戦になっていくと、次第に気持は変化していってしまう。何か悩みがあったとしても、「してもらっているのだから」というマインドが邪魔をして、それが距離を生じさせる。逆に何でも打ち明ける関係だったとしても、それはそれで負担になる場合もあったり、「こちらへの配慮もなく、よく遠慮なく何でも言ってくるな」という想いも芽生えてくる。もちろんタイミングの問題もあると思うが、バランスは常に一定ではないし、バランスを保つほど難しいことはないのだ。

しかし、それが恋愛という名の”共存”なのだから、人間は厄介な生き物だ。

総合評価:84点

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