作品情報
殺人、売春、ドラッグ等々、あらゆる犯罪が当たり前のように横行する街の一角に出入りする人々をモノクロ映像で描いた作品。ふたりの娼婦のもとに、双子の小人プロレスのレスラーたちが客としてやってくる。娼婦たちは試合に勝ったばかりのレスラーたちの稼ぎを盗むために薬を飲ませるが、その量が多すぎ、レスラーたちは死んでしまう。娼婦たちは混乱し、逃走する。
『 嘆きの通り 』レビュー
『聖なる儀式』や『深紅の愛』などで知られるメキシコ映画の巨匠アルトゥーロ・リプステインの2015年の作品。
10年近く前とはいえ、日本未公開?だったこともあり、貴重な上映となっているが個人的には『Devil Between the Legs』を上映してもらいたかったところだ。
TIFFではリバイバル上映や配給がすでに決まっている新作は後回しにしてきたものの、今作だけは時間的な都合で観ることになった唯一の過去作品。
モノクロ映像ではあるが、舞台となっているのは2010年代。
確かにメキシコ映画界の巨匠だけのことはあって、画作りや構図からは独特のセンスが伝わってくるが、テーマが重い!!
描いていることは貧困の連鎖と、年老いても体を売らなければならなかったり、認知症の母親を使って物乞いをしたりと、生活はできているが、かなりギリギリの環境下で生きる者たちの経済格差などを描いており、「嘆きの通り」とは、そんな老娼婦や貧困層が住んでいて、生活のために立って日銭を稼ぐ通りのことを指している。
経済的なことだけではなく、例えば双子のレスラーは母親への依存から抜け出せず、母親の年齢に近い娼婦を選ぶなど、母親の呪縛や生活環境が影響する人格形成など、幅広く描いているのだが、全体を通して救いがほとんどなく、淡々と抜け出せない渦でもがく人々の群像劇を見せられる拷問間がある。
客に目薬を混ぜた酒を飲ませて眠らせている間に金品を奪うという描写が出てくるが、目薬で人を眠らせることはできるのだろうか??
点数 78
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