作品情報
50年前に公開されたホラー映画史上の傑作『悪魔のいけにえ』(74/監督:トビー・フーパー)についてのドキュメンタリー。コメディアンのパットン・オズワルト、映画監督の三池崇史、ホラー映画についての著作で知られる映画評論家アレクサンドラ・ヘラー=ニコラス、作家のスティーヴン・キング、そして『ガールファイト』(00)等で知られる映画監督カリン・クサマが、『悪魔のいけにえ』がそれぞれに与えた衝撃と影響を語る。
『 チェイン・リアクションズ 』レビュー
今年50周年を迎える、トビー・フーバーが手掛けた伝説的ホラー映画『悪魔のいけにえ』(1974)は、後のホラー映画界だけに留まらず、映画界全体に多大なる影響を与えたことは言うまでもないが、『悪魔のいけにえ』を観たか、観てないかで、その後の映画の観方というか、人生観が変わってしまうほど強烈な作品だ。
その影響を、コミコンなどでもお馴染みの映画マニア、アレクサンドル・O・フィリップが、三池崇史やスティーヴン・キングなどの著名人のインタビューを交えながら、改めて紐解いていくドキュメンタリー。
今まで『封印殺人映画』(2006)などで総合的に扱われたことはあるし、モデルになったエド・ゲインまで視野を広げれば、去年MGM+で配信された『Psycho: The Lost Tapes of Ed Gein』などもあったが、『悪魔のいけにえ』だけにフォーカスした作品というのも珍しい。
これはアレサンドルならではの視点なのだが、今作においては、完全に利き手として存在感を消してしまっているだけに、もう少し出しゃばってくれてもいい感じはする。
アレクサンドルは過去にも、唯一日本でリリースされた作品としては『ピープルVSジョージ・ルーカス』(2010)を手掛けているが、ほかにもヒッチコックの『サイコ』(1960)が与えた影響を紐解いた『78/52』(2017年)、『エイリアン』(1979)の影響を紐解いた『Memory: The Origins of Alien』(2019)、あるいは「スター・トレック」を扱った『William Shatner: You Can Call Me Bill』(2023)など、何かとアニバーサリーイヤーには便乗してくる監督としても知られている。
映画を扱ったドキュメンタリーは、定期的に制作されているのだが、ほとんど日本に入ってこない現状がある。そのなかでもアレクサンドルの作品は、俯瞰的に一歩引くのではなく、オタッキーな視点全開で楽しいドキュメンタリーが多いだけに、今作をきっかけに過去作も観られるようになることを熱望する。
点数 86
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