作品情報
コロンビアの麻薬王パブロ・エスコバルの私設動物園で、アフリカから移送された「ペペ」という名のカバが飼育されていたという事実にインスパイアされた作品。映画は、アフリカから移送され、コロンビアのジャングルで殺害された「ペペ」という名のカバの幽霊の視点で語られる。それは一頭のカバの数奇な運命を語るトラベローグにとどまらず、植民地主義、生態系、人間と自然との関係、政治と暴力など、さまざまな問題を呼び起こす。デジタルと16ミリフィルム、モノクロとカラーの混交、さらにはアーカイブ・フッテージの使用など多様なスタイルが組み合わされ、新たな映画言語の可能性を模索した作品である。ベルリン映画祭で銀熊賞(監督賞)を受賞。
『ロシナンテ』レビュー

福音主義のキリスト教徒アルベルトが、殺害された父親の仇をうつための旅に出る、ドキュメンタリータッチ(撮影環境から自然とそうなっているいるのかもしれない)のロードムービー『Cocote』(2017)を撮ったネルソン・カルロ・デ・ロス・サントス・アリアスが、今度はカバの映画を撮った!と話題になった作品だ。
トルコ・イスタンブールの街で暮らす野良犬を描いた『ストレイ 犬が見た世界』(2020)やロバの視点から描いた『EO イーオー』(2022)、第34回でも上映された、家畜の牛をじっと観察させる『牛』(2021)など、動物視点から人間の愚かさや不可思議さを描いた作品が、近年増えてきている。
そして今作は、コロンビアのジャングルで殺害されたカバ”ペペ”の亡霊の視点から、カバの生態を描くのと同時に、カバの目から見た植民地主義や政治と暴力といった社会問題を描いているのだが、セリフがあるため、ダーク版『僕のワンダフル・ライフ』(2017)のような側面もある。
ペペが亡霊になり、自分がなぜ死んでしまったのかを、タイムスリップして第3の視点で観察していくスタイルであるのだが、これは観客の視点と同じ。どうして”ペペ”というカバが死なればならなかったのかを順を追って観ていくのだ。
ドキュメンタリータッチの劇映画であり、ときおりアニマルパニック匂も漂わせていたりと、多角的な要素も散りばめてはあるのだが、後半から登場するプレイボーイじじいの家庭事情パートは、何を見せられているのかと何度も思わされるが、亡霊という立ち位置からだから、自分と敵対した相手の素性を知ろうとしていたという体であれば納得できなくはないが、それにしてもダルいシーンだった。
全体的なフォーカスの仕方は、他にやるべきことがあったような気がしてならない……。
点数 77


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