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この映画語らせて!ズバッと評論!!『EO イーオー』ロバ目線で展開される人間の愚かさを描いた地獄のロードムービー!!

この映画語らせて!ズバッと評論!!『EO イーオー』ロバ目線で展開される人間の愚かさを描いた地獄のロードムービー!!

作品情報

愁いを帯びた瞳とあふれる好奇心を持つ灰色のロバ、EO。サーカス団から連れ出され始まった予期せぬ放浪の旅のさなか、善人にも悪人にも出会い、運を災いに、絶望を思わぬ幸福に変えてしまう運命の歯車に耐えている。しかし、一瞬たりとも無邪気さを失うことはない。

『EO イーオー』レビュー

最近、動物目線の映画というのが多く制作されている。

動物たちがコミカルにおしゃべりするような映画ではなく、表情だけで感情を表現するという意味では、『HACHI 約束の犬』が良くできていたし、単に動物目線の作品としては『GUNDA/グンダ』や『ストレイ 犬が見た世界』、東京国際映画祭で上映された『』などもあったりする。

今作はロバの目線から見た人間の世界、つまり動物の目線から人間の愚かさを浮き彫りにしていく作品にはなっているのだが、物語がオムニバスのように用意されている。

それによって、全体的な流れとしては、ロードムービーとして要素も強く、ディズニーの『奇跡の旅』や日本でも『ハウ』など、王道のプロットだったりもするが、ベースとなっているのは、ロベール・ブレッソンの名作『バルタザールどこへ行く』だ。

動物愛護の波を受けてパートナーのカサンドラから引き離されけてしまったイーオーの目からは、正義のもとに行動する人間たちこそ悪であり、自分からパートナーを奪った憎き相手でもあるように描かれていることから、動物愛護団体も保健所の職員も同じベクトルとして描かれている。

これは自分たちだけの価値観や感情で動く人間の行動が果たして、動物にとっても良いことなのか、本当に考えたうえでの行動なのかをロバの目線から描いた作品としては、かなり皮肉的な作品ともいえるだろう。

恵まれた環境と思っていても、本人にはそうではないかもしれない。

そんな単純な考え方が考慮されなくなっているのは、人間界の里親制度なども同じで、システム自体は良くても、その中にある少しのノイズがそもそもの趣旨を見えなくしてしまっているということも遠回しに描いていたりもして、かなり考え深い作品だ。

点数 80

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