作品情報
SARSが猛威を振るう2003年、アメリカから台湾に帰還した13歳の少女と家族。母の病や同級生との確執など、ロアン・フォンイー監督の自伝的要素も挿入される。母親役は『百日告別』(15/トム・リン監督)のカリーナ・ラム。
『アメリカン・ガール』レビュー

2017年の短編『おねえちゃん』の設定を少し引き継いでいるようにも感じられるが、それもそのはずで、どちらもロアン・フォンイー監督が少女自体が物語に反映されているからだ。
母の癌が発覚して、アメリカから故郷の台湾に出戻りしてきた家族。母は闘病によってのイラだちや悲しみ、死への恐怖などが入交り、情緒不安定でネガティブ思考である。
病気になって一番辛いのは、本人であることに間違いないが、いつまでも悲劇のドラマのような余韻に浸っているわけにもいかない。すぐさま日々の生活と、自由が拘束される状態で通常時以上の経済的負担を強いられる状況によって、父もイラ立ちを隠せず、夫婦喧嘩が増えていく。
個人的に全く同じというか、今作よりも過酷な状況下を経験した私にとっては、それが痛いほど伝わってきた。この状況における家庭環境を描けるということは、その人が同じような状況を経験したからである。だからこそ、今作を観た際に、何の情報も入れていなかった状況で、これが監督の経験に基づくものだとわかったのだ。
日常は病気を待ってはくれないという現実を大人でも受け入れるのが難しいというのに、10代の少女に理解を求めるのも無理な話であって、そんな状況を13歳のファンイーの視点から描いていく。
アメリカから台湾に越してきたことで、周りからはアメリカン・ガールと言われ仲間はずれにされる。慣れない中国語での授業や、繋がりにくいインターネット、当たり前のように行われる学校での体罰といった、台湾の嫌な部分ばかりが見えてしまう。
アメリカに帰りたい、アメリカの友達が恋しい……
全ての負の要素が母の病気によるものだと一括りにしてしまうことで、行き場のない怒りや悲しみが、闘病中に母に向かってしまう。少女の純粋が故の残酷さというべきだろうか。しかし、それも理解したうえで受け入れようとする母も、病気の苦しみが精神的余裕をむしばんでいく。
感動の押し売りのような、美談で終わるものでは決してないし、13歳の視野の広さも限られている。その限られた視野によって、つけるファンイーの折り合いの付け方はどんなものだろうか……。それを感じてもらいたい。

点数 88
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