作品情報
ある日、彼女が別人になった─。演劇ユニット ピンク・リバティの代表をつとめ、劇作家・演出家として評価を高めてきた山西竜矢が、映画監督として挑んだオリジナル脚本による奇妙な“恋愛”映画。ジャンルを問わず実績を残してきた山西が独自の視点で描く本作は、初長編作品にしてMOOSIC LAB [JOINT] 2020-2021準グランプリ含む全三部門を受賞。繊細かつ不穏な演出で、恋愛、そして人間存在の本質に迫る。“恋人が別人に入れ替わる”という奇妙な事象に翻弄される主人公・紀夫を、繊細な演技で見事に演じたのは、個性派俳優として期待される『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』の前原滉。失踪する最愛の恋人・茉莉を『あなたの番です』などで大きな注目を集める奈緒が、突如現れる謎の女マリを『そして、ユリコは一人になった』の天野はなが好演。音楽は、関西から世界を魅了する異色バンドであり、テレビ東京で放送中のドラマ『生きるとか死ぬとか父親とか』の劇中音楽も担当するVampilliaのヴァイオリニスト・宮本玲がヴァイオリンのみで制作し、不穏かつ不可思議な世界観を増幅させる。
『彼女来来』レビュー

ある日突然、彼女のマリがいなくなり、同じ名前の見知らぬ女性が家にいる!!という、なんだか消失もの、SFものを匂わせるような展開で、実は同一人物であって、主人公の妄想オチかと思いきや、確かに以前のマリは存在はしていたということがマリの姉の存在によって実証されてしまっていることが難点。
残念なことに、この姉の存在が設定のあやふやさを際立たせてしまう。誰も近くでは見たことない設定だったり、別人のマリを姉が見たときに「いるじゃん!」とか「私に妹いないけど」とでもなれば、ミステリー要素もあって、いろいろ考察しがいがあるというもの。
トマトジュースが床にこぼれる描写から、血を連想して、フラッシュバックにより、実は主人公が殺している説なども考えたが、それも違う…
終始「この映画どう終わるのだろうか」という疑問がつきまとうし、映画を観終わった後でも疑問が残ってしまう。新宿武蔵野館にて監督のアフタートークショー付を観て、製作者の意図も聞いたのだけど…いまいち納得できない。
警察が全く動かないのも不自然。今の警察は、通報されたらすぐに来るし、事件に発展して叩かれるのを嫌うから、大したことでなくても通報があれば、こっちが遠慮してしまうぐらい大勢やってくるご時世。
家の中に知らない女性がいるという通報があれば、すぐに駆け付けるはずだし、直系の親族である姉も、いつまでも警察に通報しないのもあり得ない。細かいことを言っているようだけど、何が言いたいかというと、下調べや細かい描写が甘いということ。
人一人が消えたとなれば、単純に事件だから、この対応の仕方だと、主人公もしくは姉が殺害しているようにしか思えない。
短編なら通用するかもしれないけど、長編ならば、ある程度の「つじつま」は必要なのに、フワっとさせてはいけない部分までもがフワっとしている。
こういうアイデアは考えつく人は多いと思うけど、それを形にするうえで、いろいろと「つじつま」という名のハードルがあって、結局踏み出せないことが多いのだが、今作の監督は、考えるよりも作ってみるという気持ちの方が先行しているのだろうか…ただ、それは実は大事なことでもある。
アイデアがあっても形にできなければ、それはないのと一緒でもあって、とりあえず作ってみるという行動力は評価できる点である。
今作がもっとブラッシュアップされた際には、もっと素晴らしい作品が作れただろう。
それは次の作品に活かしてもらえれば、それで良いのだと思うだけに、次回作の期待できる監督のひとりであることは間違いない。
単発映画としては納得ができない作品ではあるが、今後の作品への期待値は高まった!!

点数 78
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