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この映画語らせて!ズバッと評論!!『対峙』同じ年ごろの子どもをもつ両親だったはずが、何がどう間違って、どうしてこうなってしまったのだろう……

この映画語らせて!ズバッと評論!!『対峙』同じ年ごろの子どもをもつ両親だったはずが、何がどう間違って、どうしてこうなってしまったのだろう……

作品情報

アメリカの高校で、生徒による銃乱射事件が勃発。多くの同級生が殺され、犯人の少年も校内で自ら命を絶った。それから6年、いまだ息子の死を受け入れられないジェイとゲイルの夫妻は、事件の背景にどういう真実があったのか、何か予兆があったのではないかという思いを募らせていた。夫妻は、セラピストの勧めで、加害者の両親と会って話をする機会を得る。場所は教会の奥の小さな個室、立会人は無し。「お元気ですか?」と、古い知り合い同士のような挨拶をぎこちなく交わす 4 人。そして遂に、ゲイルの「息子さんについて何もかも話してください」という言葉を合図に、誰も結末が予測できない対話が幕を開ける……。

『対峙』レビュー

銃乱射事件の被害者両親と加害者両親の対話を描いた、ほぼワンシチュエーションの会話劇。

全編を通して、実際に会話には参加しない教会の職員含め全ての登場人物に緊張感が伝わり、相手の顔色を窺っている。言葉と言葉の間や空気感がいちいち重苦しいし、胃が痛くなるようだ。

何気ない世間話から入り、本題の事件について、事前に防げたのではないか、ビデオゲームが悪影響だったのではないか、親としてちゃんと子どもと向き合っていたか……。

同じ年代の子どもの親という点では、同じ立場であるし、想いも同じはずなのに、何がどう、いつ間違ってしまったのだろうか。

当事者不在の中で、過去にどうあるべきだったかの議論を交わし、解決どころか泥沼になり抜け出せないかと思いきや、かすかな光もあったりと、ひたすら暗い物語ではないのが唯一の救いだともいえる。

回想シーンも入れずに、正真正銘会話だけで展開されるというのに、銃乱射事件の状況を想像させて、スリルさえも与えられるのは構成力が優れているからだろう。

教会が舞台となっていることから、キリスト教における「赦し」の要素も強く、宗教映画としての側面も強いのと、会話だけで構成されているから映画としては画的に地味であり、舞台でやればいいというそもそも論などを考えてしまうと、受け付けない人がいる作品かもしれない。

フラン・クランツ

出演:リード・バーニー、アン・ダウド、ジェイソン・アイザックス、マーサ・プリンプトンほか

点数 80

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