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第38回東京国際映画祭作品レビュー:09:『一つの夜と三つの夏』

第38回東京国際映画祭作品レビュー:09:『一つの夜と三つの夏』

作品情報

監督/脚本:カンドゥルン

エグゼクティブ・プロデューサー:ルー・シュー

エグゼクティブ・プロデューサー:ノルブ・ツェリン

プロデューサー:ジャン・チェンチェン

プロデューサー:リャン・イン

撮影:リー・スーウェイ

撮影:タシ・ヌムジャ

編集:リウ・シンジュー

音響:ボボ・ラウ

音楽:ワン・チュエン

美術:ザムドゥ

出演:ツェリン・ヤンキ

ツェキィ・メトック

デチェン・バンゾム

タンサン・ラモ

100分/カラー/チベット語、中国語/2025年/中国

©TIBETAN ANTELOPE FILMS CO., Ltd.

【ストーリー】

サムギは幼なじみのラモとの苦い思い出についての映画を撮るため、故郷のラサへ戻ってきた。ずっと心の奥底に抱えてきた記憶が甦るなか、突然現れたラモとの再会が静かな波紋を広げていく。

映画制作の現場で下働きながら就職活動をしているサムギ(Netflixのインドドラマ「ミスマッチな関係!?」のガリマ・ヤジニクに似ている)は、子どもの頃に親友ラモの大切な財布を盗んでしまったことへの罪悪感を抱いたまま大人になった。前に進むためにも、その苦い思い出を自主映画にしようと記憶の探求を開始する。

サムギは、ラモが唯一の親友だったが、ラモは人気者で友達はたくさんいた。嫉妬なのか、単に財布が欲しかったのか、財布を盗んでしまうが、その財布の存在を親に知られてしまい、道で拾ったことしたものの、父親はテレビマン。「これには何か大きなストーリーが隠されているのでは?!」と思い、大事にしてしまう。

仮に道で拾ったとしてもサンギは、その財布が誰のものかを知っているわけで、それを知らないふりしている時点で盗んだ犯人であることが、見る人が見ればバレバレな状況に。当然、ラモもそれを知り、直接的に問いただしたりはしないものの、ふたりの溝は埋まらないまま、離れ離れに。

当時の想いをフラッシュバックと、自主映画の撮影風景を重ねていく映画マジックで描いていくのだが、ただでさえ人間の記憶とは非常に曖昧なものである。理想と後悔、若干妄想じみたものが交じり合っているものが、思い出となっていたりする。

祖父の葬式や同窓会でラモと再会するが、どうも記憶が嚙み合わない。つまり記憶とはそんなもので、とくに映画やドラマで語り部が主人公であった場合、その記憶自体を疑う必要があるのだが、それがさらに”映画の中の映画”という構造が、作中劇としてのフィクションなのか、それとも実際の出来事、もしくは理想化された記憶なのか……より事態を複雑化している。

いろいろ言い訳や、後悔を何十回、何百回と積み重ねたとしても、たった一回の本音の謝罪に勝るものはないと痛感させられる作品でもあった。

ちなみに大人と子ども時代の俳優が似ていて、よく似てる人を見つけてきたなぁ~と思ったし、なぜかエンディングにはヒップホップが使用されていて驚かされた。

総合評価:80点

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