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第38回東京国際映画祭作品レビュー:08:『明日のミンジェ』

第38回東京国際映画祭作品レビュー:08:『明日のミンジェ』

作品情報

監督/脚本:パク・ヨンジェ

エグゼクティブ・プロデューサー:キム・ソンウン

撮影監督:ミン・ソンウク

美術:キム・ジニョン

衣装:オ・スジン

出演:イ・レ

クム・ヘナ

ノ・ジェウォン

キム・セウォン

チェ・ムソン

パク・ミョンフン

チャン・ソヨン

98分/カラー/韓国語/2025年/韓国

©GE PRODUCTION

【ストーリー】

孤児院育ちで陸上部のスター、17歳のミンジェは、その出自と優秀さゆえに絶え間ないいじめを受けている。裕福なヘリムの両親が娘の将来のために成績を操作したことで、ミンジェの成功への道はさらに閉ざされてしまう。焦るミンジェはヘリムを妨害するために策を講じ、それを知ったコーチに利用され、事態は大きな波紋を広げていく。

Netflixドラマ「地獄が呼んでいる」のヒジョン役が話題となった、韓国の有村架純ことイ・レ主演作。

親がいなくて施設で育ったミンジェは、努力に努力を重ね、陸上選手として記録を伸ばしてきていたが、努力だけではどうしようもできない、裕福な親のサポート、政治的駆け引き、学校の寄付金制度……と見えない、いくつもの壁がミンジュを圧迫していく。

コーチのジスはミンジェの才能に気づいていながらも、学校に影響力のある親をもつヘリムのサポートに徹することしかできないし、同等のサポートをしてあげることができないもどかしさがあるが、それだけではなく、ジス自身も見えない壁によって圧迫されている状態なのだ。実力だけでは伸し上がれない社会システムを様々な立場から多角的に映し出している。

いつも1位だったミンジェの記録が明らかに改ざんされ、4位に転落していることに違和感をもち、コーチもそれを黙視している。どうしようもない怒りやもどかしさから、アスピリンアレルギーのヘリムの飲み水にアスピリンを混ぜて、それを飲んだヘリムは病院に搬送されるかぜ、幸いにも重症にはならなかったものの、その様子は防犯カメラに撮られてしまっていた。ジスは、それを公表しないかわりに、競技の替え玉をして優秀な成績を残し、進学を優位にさせるため、記録をお金で買う闇スポーツの世界にミンジェを勧誘する。ミンジェにとって走ることは命と同じ、そんな命を奪われるなら、闇でも~と、自分が嫌っていた権力者によって改ざんされた記録の片棒を担ぐことになってしまうのだ。

「イカゲーム」シーズン2~3において、薬物中毒になるナムギュ役を演じたノ・ジェウォンが闇スポーツのコーチを演じているが、闇に染まらないようにミンジェをあえて、遠ざけようとする悪は悪でも、ちょっとだけいいヤツを演じていたのも印象的だったが、それもあったりで、良心の呵責がミンジェを苦しめる。そんな戸惑いが競技にも反映されてしまい、思うような成績を残せず、ジスも上から圧力をかけられ、ふたりの決して交わらない想いがぶつかり合うことに。

のちにヘリムは、知っていてアスピリンを飲んだことがわかる。それは両親のプレッシャーから解放されたいと思ったから。つまりヘリムも社会システムの犠牲者のひとりだったのだ。

競争社会と、実際の競争をかけているわけだが、人として間違っても勝つか、それとも正しく負けて、人としては勝つのか。ミンジェがどちらに向かうのか、それを見守っていく作品だ。

総合評価:90点

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