作品情報
監督/脚本:イシアル・ボジャイン
脚本:イサ・カンポ
プロデューサー:フアン・モレノ
プロデューサー:コルド・スアスア
プロデューサー:ギレルモ・センペレ
音楽:シャビ・フォン
撮影監督:グリス・ホルダーナ
ライン・プロデューサー:グアダルーペ・バラゲール
編集:ナチョ・ルイス=カピヤス
音響ミキサー:エバ・バリニョ
出演 :ミレイア・オリオール
ウルコ・オラサバル
- 117分
- カラー
- スペイン語
- 2024年
- スペイン/イタリア
【ストーリー】
スペイン北部のポンフェラーダ市で、2000年に起こったセクシャルハラスメント事件を映画化した作品。市長からセクシャルハラスメントを受けた市議のネヴェンカは告発を決意するが、そのために彼女の社会的立場は危うくなる。

Netflixで「ネベンカ・フェルナンデス: 沈黙を破いて」としてドキュメンタリー化もされるなど、スペインでは有名なセクハラ告発事件を劇映画化。本作を手掛けたのは、ビクトル・エリセの『エル・スール』(1982)でエストレーリャを演じるなど、女優としても活躍し、監督作品は日本ではあまり公開されていないものの、『オリーブの樹は呼んでいる』(2016)や『ザ・ウォーター・ウォー』(2010)などといった作品で知られているイシアル・ボジャイン。
日本未公開作品でいうと、1990 年代初頭のカトマンズを舞台に、カタルーニャ人の教師の視点で貧困と脆弱な教育制度を描いた『Katmandú, un espejo en el cielo』(2011) や40代女性の人生再出発を描いた『La boda de Rosa』(2020)などのように、女性の強さを描いた社会派作品を多く手掛けてきた。その点では、今作をイシアル・ボジャインが今作を手掛けるというのは必然ともいえるだろう。
一部で女好きという噂が絶えなかったものの、メディアや市民にも愛される人気の、ポンフェラーダ市長イスマエル・アルヴァレスは、一見人当たりや面倒見も良いが、その裏には闇が隠されていた。
ほとんど社会経験もなかったネヴェンカが新人議員に抜擢されたことで、イスマエルの標的にされてしまう。周りの議員や職員たちも「まただよ……」と思いつつ、見て見ぬふりをしている。ちなみにイスマエル役のウルコ・オラサバルが少しザック・エフロンに似ている。
イスマエルの妻は末期がんで亡くなり、そこに寄り添ってきたネヴェンカの同情につけこみ、肉体関係になるが、ネヴェンカは冷静になり、関係を続けられないと拒絶したことから、セクハラとパワハラ、モラハラ……といったハラスメント地獄に陥っていく。
責任感の強く、世間から逃げ出したと思われたくなかったネヴェンカは、そんなハラスメント地獄を耐えながら役職を全うしようとするが、次第に過激さを増し、ついにはネヴェンカだけではなく、市長という職権を乱用し、両親や友人にも経済的圧迫をかけてくる。つまり同僚たちも同じく家族を人質にとられているような立場上、ネヴェンカに加担できない状態にあったのだ。
ネヴェンカも一度はイスマエルを受け入れてしまったため、いくら世間に訴えても恋愛関係のもつれだという視点から見る人も多く、告発したところで勝てる見込みはあまりないのが現状というなかで、神経衰弱し、ついには国を出るところまで追いつめられてしまう。実際のネヴェンカも国に戻ることができなくなってしまったそうだ。
今作はセンセーショナルかつ映画的に演出された逆転法廷劇ではなく、現代ほど、ハラスメント問題に世間が目を向けていなかった時代の空気感をリアルに反映させながら、被害者であるはずのネヴェンカの精神的負担がいかに大きかったかを、坦々と容赦なく描いているのだ。
総合評価:83点



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