作品情報
脚本/監督/プロデューサー/原案/音楽:アレハンドロ・アメナーバル
原案:アレハンドロ・エルナンデス
フリオ・ペーニャ・フェルナンデス
アレッサンドロ・ボルギ
ミゲル・レジャン
フェルナンド・テヘロ
- 134分
- カラー
- スペイン語、アラビア語
- 2025年
- スペイン/イタリア
【ストーリー】
「ドン・キホーテ」の著者ミゲル・デ・セルバンテスの若き日を独自の解釈を加えつつ、壮大なスケールで描いた歴史劇。1575年、スペイン海軍の兵士として参戦し、負傷したセルバンテスは、オスマン帝国支配下の海賊に捕らえられ、アルジェリアで囚われの身となる。捕虜生活を送るなか、セルバンテスはストーリーテラーとしての才能を発揮し、捕虜たちに勇気と希望を与える。

『オープン・ユア・アイズ』(1997)や『アザーズ』(2001)などで知られるアレハンドロ・アメナーバルによる、長編作品としては『戦争のさなかで』(2019)以来となる5年ぶりの新作。
16世紀はイスラム教徒とキリスト教徒が激しく衝突しており、互いを捕虜にしたり、されたりしていた。交換条件として、身代金を払う、もしくは改宗することで解放され、自由になることができた。ところがセバスチャンは、ある誤解から高額すぎる身代金をかけられて、いつまでも解放されない状況にあったのと、片腕を負傷しており生活や肉体労働にも支障をきたしていたため、絶望的な毎日を過ごしていた。
そんななかで、同胞たちの処刑方法を記録した処刑図鑑を執筆している、老捕虜の作家と出会い、文学を学んでいくなかで、作家としての才能を開花していく。あるとき、異教徒の恋を妄想した即興作が話題となり、捕虜たちはその続きを早く知りたいと作品を書き上げていくが、その話聞いていたのは仲間だけではなく、摂政のパシャもそのひとりであった。
ミゲルはパシャに呼び出され、自分が好む物語を読めば、限定的な一時開放や食事を手にすることができた。この関係は次第にパシャに特別な感情を芽生えさせる。パシャの過去を知ることで、ミゲルにも特別な感情が芽生えつつも、それは恐怖による支配からくるものであった。そんなふたりの交じり合わない感情による緊張、そしてパシャを受け入れることで、自分が自由になっていく一方で、同胞たちの解放は遠のいていく……。そんな私欲と使命を天秤にかけながらの駆引き描いた同性愛描写もある。
著書「Cervantes íntimo. Amor y sexo en los Siglos de Oro」でもミゲルのことを取り上げた、作家ホセ・マヌエル・ルシア・メギアスが歴史監修を務めていることもあり、今作はホセの著書と同じように、都市伝説的に語られてきた、ミゲルとパシャの同性愛ともいえる関係性にフォーカスしたものとなっているのだ。
語られない歴史のなかに、実は同性愛があったのではないかという解釈を反映させた歴史劇は、近年では珍しくなく、ときには著者の妄想的目線が強く反映されている場合もあったりするが、そもそも歴史自体があやふやなものなのだから、そう解釈したとしても、間違いであるとは誰も指摘することはできないのだ。
例えば日本でいえば北野武監督作『首』(2023)もあったりするが、どちらかというと、韓国映画『王の男』(2005)のようなテイストといえるだろう。
「ドン・キホーテ」について、原作の知識や舞台背景を知っていれば、着想元となったかもしれない出来事などを見つけることができるかもしれないが、そこまで前知識を入れておく必要のない視点で描かれている。
総合評価:86点



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