作品情報
監督/脚本/プロデューサー:アミルレザ・ジャラライアン
撮影監督:モハマッドレザ・ジャハンパナ
編集:プヤン・ショレヴァル
衣装:ゴリ・ザレイ
録音:ハディ・マナヴィプール
音響:ラミン・アブセドグ
出演 : カティ・サレキ
エブラヒム・アジジ
アリ・モサッファ
ナズ・シャデマン
マータブ・アミン
80分/カラー/ペルシャ語/2025年/イラン
【ストーリー】
若い女性がイラン南部の静かな島にキャンプを張り、周囲の静寂に浸っている。彼女は海辺で年配の女性と穏やかで親密な会話を交わし、過去、未来、そして指先ひとつで人間の脈を聴く静かな技術について語り合う。また、若い男性と生と死について短くも興味深い対話を交わす。やがて彼女は荷物をまとめてテヘランへと帰っていく。

何も起こらない映画といわれていた本作だが、決してそんなこともなくて、何気ない生活風景の中にイランという国における女性の立ち位置と、現代女性の意識変化が浮き彫りにされている。
イランは大気汚染が深刻な問題としてあり、空気の綺麗な南部の島周辺に、日常生活から逃げてきたであろう主人公。自給自足で生活しながら、たまに街に出たり、レストランで食事をしたりと、何気ない日常をおくっている様子を名が回しで撮り続けている。たまに母親らしき女性が遊びにくるが、この女性が現実の存在なのか、それとも幻覚なのかは不明だ。監督もそれは、それぞれで考察してみろと言わんばかりに教えてくれなかった。
さすがに日常から逃げ出した現実逃避的な生活をいつまでも続けるというのも難しいし、近くで同じように生活する男が話かけてくるものの、その男は主人公に好意をもっていて、アプローチしてのだから、次第に鬱陶しくなってくる。明確な描写はないが、主人公はレズビアンもしくはバイセクシャルなのかもしれない。そのあたりの生きづらさも若干反映されているように感じた。
そろそろ生活も不便だから家に戻ることにするが、しかしそこは、大気汚染の真っただ中。日常ではビジャブを着なければならない不自由があるものの、室内での日常生活には、それなりに快適そうだ。
つまり今作は、自由だけど不便な外か、もしくは不自由だけど便利な中の両極端の間で揺れ動く、イラン女性の象徴のような主人公の動向を見守る作品なのだ。
総合評価:80点



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