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第38回東京国際映画祭作品レビュー:03:『ル・ラック』
©Casa Azul Films – L’Atelier

作品情報

【スタッフ/キャスト】

監督/プロデューサー/撮影/編集/音響:ファブリス・アラーニョ

撮影:ジョゼフ・アレディ

編集:クロエ・アンドレアダキ

録音:レア=クレスティン・ベルナスコーニ

出演:クロチルド・クロ

ベルナール・スタム

  • 83分
  • カラー
  • フランス語
  • 英語、日本語字幕
  • 2025年
  • スイス

©Casa Azul Films – L’Atelier

【ストーリー】

広大な湖を舞台に、数日間におよぶヨットのセーリング・レースに挑戦する中年のカップルを描く。ふたりは激しい嵐に見舞われながらも執念でレースを続行するが、彼らが何者なのか、また、こうまでしてレースを続ける理由は何なのかは明確には説明されない。

ジャン=リュック・ゴダールの作品で撮影監督を務めてきたファブリス・アラーニョの長編初監督作品。といっても1970年生まれなので、55歳にしてのデビュー作。今まで短編や中編ドキュメンタリーはいくつか制作してきたが、今作も無理に長編にしないで、短編にした方が、本当に丁度良い作品といえる。

ドキュメンタリー作家が劇映画監督に転向する際によくあることなのだが、他人には理解されないような拘りがあるということ。日本で最近公開された作品でいうと、『ラスト・ブレス』(2025)のアレックス・パーキンソンは、『ヒョウと生きる』(2024)や『The Born Free Legacy』(2010)といったドキュメンタリーを手掛けていたこともあり、なんだかわからないが、特殊な機材を「これすげぇえんだぜ!」と言わんばかりにまじまじと、意味ありげに映していた。

それと同じようにヨットの帆の部分だけをじ~っと映してみたり、「これすげぇんだぜ!」画がいくつかあるのだが、一般人には理解はできない。けど、それをそう感じさせるのはセンスなのだろう。撮影監督をしていたことが誰にでもわかる映像センスではあるし、拘りもすごく感じて良いのだが、実験的”過ぎる”作品だ。

暗いときは暗いままだし、音楽もなければ、効果音もなく、自然の音が主体。風、波、雷、雲……。

ただ何もないときは、かなり静かなシーンが続き「えっ?終わった」と思う場面もちらほら。主人公カップルは存在しているが、主役は2人以外の風景そのものといったところだろうか。

普通に生活していて、ひとりのときは映画やドラマ、漫画みたいにセリフを喋ったりするわけではないのはわかっているが、今作はあくまで日常を切り取っているため、ひとりのときは基本的に喋らないし、感情をセリフにするという余計な行為も一切ない。

実験的、実験的と、こうやって書くと興味をもつかもしれないが、興味と忍耐力のどちらが勝るのかを試されているようでもある。

これを日本の劇場で公開する強者配給会社があるとしたら、心から尊敬する。

総合評価:74点

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