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新作映画短評:『君が最後に遺した歌』(3月20日公開)

新作映画短評:『君が最後に遺した歌』(3月20日公開)

作品情報

【ストーリー】

ある日、クラスメイトの遠坂綾音に詩を書いていることを知られた。 文字の読み書きをすることが難しい“発達性ディスレクシア”の症状を抱える彼女に代わり、僕が詞を書き、彼女が歌う。“文字”のない君と、夢のない僕。何かが欠けた者同士。 それは僕にしかできないこと、そして彼女にしかできないことだった。 二人だけの歌、二人だけの居場所、二人だけの秘密の暗号。 君と見つけた日々が、たった10年しかないと僕は知らなかった。 あの時、言えなかったけど…本当は…。

【クレジット】

原作:一条岬『君が最後に遺した歌』(メディアワークス文庫/KADOKAWA 刊)

監督:三木孝浩

脚本:吉田智子

音楽プロデュース:亀田誠治

キャスト: 道枝駿佑、生見愛瑠、井上想良、田辺桃子、竹原ピストル、岡田浩暉 、五頭岳夫、野間口徹、新羅慎二、宮崎美子、萩原聖人ほか

制作プロダクション:TOHOスタジオ

配給:東宝

©2026「君が最後に遺した歌」製作委員会

公式サイト :https://kimiutamovie.toho.co.jp/

3月20日(金・祝)公開

なにわ男子の道枝駿佑と生見愛瑠のW主演による音楽映画。

劇場版TOKYO MER〜走る緊急救命室〜南海ミッション』(2025)、『モエカレはオレンジ色』(2022)と共通して言えることだが、生見愛瑠は非常に演技が上手い女優だ。バラエティやファッションモデルとしてのイメージが強いが、俳優としても注目されるべき逸材。さらに今回は、歌にも挑戦していて、それが本格的。吹替えだと思ったら本人だと知って驚いた。

例えば『タイヨウのうた』(2006)の場合は、YUIが主演を務めることで成り立っていた部分がある。ちなみにドラマ版の沢尻エリカもクオリティは高かった。近年も『さよならくちびる』(2019)のように、もともとシンガーではない俳優が歌唱部分を吹替えなしで挑んで成功した例はいくつかあるが、失敗例もそれなりにあるなかで、今作は大成功。

2月に公開されたばかりの『ほどなく、お別れです』に続いて、 遺された者側の視点の切り取り方に長けている 三木孝浩が監督を務めているが、今回はさらに吉田智子が脚本として参加している。

吉田といえば、『君の膵臓をたべたい』(2017)の脚本家としても知られているが、こちも遺された者の視点から、物事を描くことに長けている。つまり今作が扱うテーマとしては最強タッグだ。

というのも今作は、闘病ものとしての側面は、あえて強調しておらず、男女に限らない、足りない部分を補える関係の大切さを描いているのだ。

ほとんどの人間は何もかもできるようにできていない。推理は得意でも学校の勉強は全くできない金田一少年のように、何かが極端に得意でも、それと同時に何かが極端に不得意な人というのはいるわけで、アーティストも例外ではない。

それを補い合える関係は、引力のような魂の繋がりによって、巡り合えることもあるが、一生のうちに何度もあるわけではない。それに気づかない場合もあるし、気づいていても離れてしまう場合もある。

だからこそ、主人公ふたりにとってのファーストソングの制作過程と葛藤部分で時間を大きく配分しているし、なんなら中盤の「春の人」のシーンで『プッシーキャッツ』(2001)みたく、感動的に完結させても成り立つといえば、成り立つ。

そのため、後半の展開が急ぎ足すぎて、とってつけた感があるものの、 作中曲のキャッチーさから形成される音楽映画としてのカジュアルさも一定数あることが逆に機能して、なんだかんだで最終的に絶妙なバランスに落ち着いたといえるだろう。

総合評価:81点

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